カトリック（catholic）

か：カトリック：武装したスペイン征服者たちはカト リック司祭や宣教師を伴って新大陸を植民地化した。司祭や宣教師たちは先住民たちにキリスト教すなわちカトリックの教えを布教したが、先住民には固有の民 衆信仰がありその布教には困難を極めた。イベリア半島では当時、異端審問が盛んであったが、新大陸の言語や文化が不案内であった宣教師たちは、まず先住民 を教導するために言語や文化に関する記録を取り始めた。そのような宣教師や神父は記録者（クロニスタ）と呼ばれた。しかし、異端の土着信仰はなかなか放棄 されず、先住民の側も宣教師たちに合わせながら、カトリックの信仰の慣習を取り入れていった。そのような妥協の産物が民衆カトリック信仰（folk Catholicism）とよばれるカトリックと民衆信仰のハイブリッドである。ちょうど隠れキリシタンが聖母マリアを観音様に擬していくうちに両者が習 合するものと似ている。中央アメリカの独立（1821年）後とりわけ19世紀末にアメリカ合衆国が同地域に影響力を及ぼすようになるとアメリカのカトリッ クと福音主義的なプロテスタントが布教を始めるようになる。後者の宗派はカトリックの聖職者独占や聖像崇拝を批判するためにカトリックもその対抗上キリス ト教信仰の合理主義を採用するようになり民衆カトリック信仰が、カトリックならびにプロテスタントからも弾圧や抑圧の対象になる。両派の対抗的関係のなか で非先住民系ラディーノの近代主義者の中からプロテスタントに改宗するものが増えてゆく。とりわけ軍人政治家の指導者が権力を執るようになると徴兵先住民 を中心にプロテスタントへの改宗者が増えていった。本書でも経済現象と政治現象と宗教現象の間の複雑な関係が描写されているが、内戦時代の暴力は、その宗 教的覇権の布置を大きく変えたものであることが示されている。

• あ：「厚い記述」(thick description)
• い：イデオロギー（ideology）
  
• い：インディヘナ／インディオ／先住民（indígena, indio）
• え：エスノグラフィー（ethnography）
• か：カトリック（catholic）
• く：クライアンティズム（clientelism）
• ぐ：グアテマラで話される言語
  
• こ：コヨーテ（coyote）
• し：司法人類学者（forensic anthropologist）
• じ：人種主義（racism）
• で：ディアスポラ（diaspora）
• な：ナルコトラフィカンテ（narcotraficante）
• ね：ネポティズム（nepotism）
• の：能格言語(ergative language)
• ふ：フィールドワーク（fieldwork）
• へ：ヘゲモニー（hegemony）
• ほ：本質主義(essentialism)
• ぽ：ポポル・ヴフ神話（Popol Vuj）
• む：ムニシピオ（municipio）
• り：リオス・モント（José Efraín Ríos Montt, 1926-2018）
  

リンク先

• 『暴力の政治民族誌』を読むための用語集
  

文献

• 『暴力の政治民族誌：現代マヤ先住民 の経験と記憶 』 　池田光穂 著／大阪大学出版会 刊 　2020年8月

その他の情報

Copyleft, CC, Mitzub'ixi Quq Chi'j, 1997-2099

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