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能格言語(ergative language)

解説:池田光穂

の:能格言語(ergative language):能格とは、他動詞の主語に使われる格——主格という——のこと。つまり能格言語では自動詞の格変化——絶対格変化という——と他動詞 の格変化——能格変化という——が異なる。では能格言語であるマヤ語の何がユニークかと言うと、他動詞構文(能格)は目的語を必要とするが、他動詞構文の 人称変化が自動詞の格変化と合致するという点である。他動詞構文は目的語を主語として受動態を作ることができるが、それをさらに反転させて逆受動態という 構文をつくることができる。その際には目的語自体も抜け落ちて表現されなくなる。つまり逆受動態においては、他動詞の主語は自動詞の主語に「なる」という ユニークな
言語機能をもつようになる。

能格=他動詞の主語の格(case):「能格的な格組織とは、自動詞の主語と他動詞の目的語が同じ格で標示され、他動詞の主語だけが別の格で標示される格組織である。能格的な格組織の他動詞の主語の格は能格、自動詞の主語と他動詞の目的語の格は絶対格と呼ばれる。たとえばマム(Mam)語では、自動詞の主語と他動詞の目的語にはB活用(絶対格 Absolutive)で表現されるが、他動詞の主語の活用はA活用(能格 Ergative)である。」

●能格言語の実例

マム(Mam)語は能格言語である。能格言語の特徴は、他動詞の目的語の活用と、自動詞の活用が同じ形態をとる。英語のような対格言語では、自動詞と他動詞の活用 は同じで区別されず、他動詞の目的語の活用は動詞の活用とは無関係にユニークである。A 活 用(Juego A)=能格は、(1)名詞を所有形で表現する――名詞を所有するとき――ときと、(2)他動詞の主語を示すとき、にそれぞ れ使われる。B活用(Juego B)=絶対格は、(1) 自動詞の主語を指示する、あるいは、(2) 他動詞の目的語を指示する。


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