On Qualitative Study and Ethnography:05
学習の意義: 1)観察(observation)、参与観察 (participant observation)、映像撮影(静止画と動画)のそれぞれの利点と弱点についてまとめてみよう。 2)エスノグラフィー(民族誌)ethnographyの4つの特徴について説明をみて、それについて、同じ教室の仲間に、わかりやすく説明してみよう。 3)グラウンディッドセオリーのコード化、カテゴリー化とは何か?説明してみよう。 |
第5回 2017.05.15; 2018.05.14, 2019.XX.XX; 2020.05.04;
12.観察、エスノグラフィー、視覚データ法
13.視覚データ収集法の概観
14.データの文書化
15.コード化とカテゴリー化
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12.観察、エスノグラフィー、視覚データ法
観察、参与観察、エスノグラフィー、及び視覚分析(写真と映 画)をとりあげる。
1)観察( observation)
話すことと聴くことからなるインタビューに加えて、観察することは質的方法にとっては重要なこと。
完全な参与者から完全な観察者まで、さまざまなスペクトラムのなかに位置づけられる。
ハンフリーズの1960年代の男性同性愛者の研究がとりあげられる。現在では、そのような出歯亀(voyeur)ヴォイヤーのたちば で、能 天気に調査対象者のことをべらべら語れない調査倫理上の問題もあるかもしれない(173)。
※文化人類学者は、しばしば出刃亀だと揶揄されることがあるが、文化人類学者の僕は「それは本当だ!」と言いたくなる(→「文化人類学とは?」)
あまり邪魔をしない参与観察者のテクニックについて実例で示される(174)
方法論一般への貢献:1)観察データと他者のデータとのトライアンギュレーション、2)別の観察者の導 入、3)ジェンダー差への理解(これ は配慮の問題でもあるが、データ収集の質にも関係)
ヨルゲンセンの7つの特徴は、何か意味があるのかな?(176)
むしろ、スプラッドレーの3つのフォーマルな観察の分類のほうが、考えるに値する。
1.描写的観察、2.焦点観察、3.選択的観察。
構造化記録用紙の使用:ルーブリックのような もの か?
ベッカーらのBoys in white の参与観察における「仮説」を想定することの意義(178)
参与観察のクロノトポス[時空 間]:1)空間、2)行為者、3)活動、4)対象、5)行為)、6)出来事、7)時間、8)目標、9)感情。
カウンターパートの存在、とその関係
「ゴーイング・ネイティブ」に対するジンメル(Georg Simmel, 1858-1918)の戒め、は、もはや西洋の観察者の神話になりつつあるか?(179-180)
ICU調査研究による、シュプレンガーの「失敗」の記録は、それはそれで貴重(180-181)
参与観察が、epistemologic detachment であるのは、本当なのか?(181)
フィスクは「ゴーイング・ネイティブ」は、危険と主張しているが、本当にそうかな?——民族誌記述経験は、もっと奥深いものであるはず だ (『文化批判としての人類学』「文化の窮状」)
フィスクの議論において欠けているのは、市井のひとも、しっかりと観察しているということだ。ゴッフマン(ゴフマン)のアプローチを思 いだ そう。そして、フォークサイコロジーの復権(J・ブルナー)も考えてもいい。
参与観察の限界(183)
184ページの表の含意:エドマンド・リーチがいう調査対象者が 「言うこと」と「実践すること」の間の一致と齟齬に関する観察と、その理由 を考えること。
3)エスノグラフィー(民族誌)ethnography
エスノグラフィー調査の特徴(185)
方法論一般への貢献(186-187)
エスノグラフィーの限界(187):デリダの代補の概念を思いだした。エスノグラフィーには完成なし。トポロジカルな限界、クロノロジ カル な限界
4)写真
・写真技法としての、ミードとベイトソンの共同研究『バリ島 人の性格』あるいは、ギアーツの「バリにおける人間・時間・行為」を参照
・カメラ。ロラン・バルトの写真論が登場(189)
・写真誘い出しインタビューは、デジカメやスマホが普及した現在、とてもよく簡便な方法として使われるようになってきた。
兵士の写真の分析(191)
写真方法の問題点(192)
5)映画の分析:類書に譲りたい
多くの動画映像分析の評論は稚拙である。その理由は、1)素材の情報量が多いこと、2)膨大な情報をスパスパ切る方法論がいまのところ なく、各人の名人芸的な手法のみが喧伝されること、などによる。
私がお奨めの映画は『セルロイド・クローゼット』ほか(→「ゲイ・レズビアン
からクイア・アイデンティティへ」)
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13.視覚データ収集法の概観——とても短い章、その存在意義が問われる章
基準をもちいたアプローチ(201):前回使ったルーブ リック方法がここでも披露されている。
方法の選択とその適用状態の点検
研究対象に対する方法の適切性
方法を研究プロセスに組み込む
201ページの表;203ページのチェック・リストも有用
201ページの表
14.データの文書化
1)データ記録の可能性と課題
2)フィールドノーツ(フィールド・ノート[単数])
ロフランドらは、禁欲的に自己の管理して(?修道院的に時間を使い)長く書けと推奨しているが、これはノート・パソコンの普及で、その傾向 に拍車がかかっているようだ。
僕(池田)は、これは、フィールドノートの冗舌化ではなく、現在のトレンドでは、執筆の開始がはじまっていると思う。
3)調査日誌
あまりよい例かどうかはわからないが、M・レリスの『幻のアフリカ』を思いだす。レリスのダカール=ジプチ調査団(マルセル・グリオール団
長)の中における地位の問題もあるのだが。
4)記録用紙
記録用紙を用いるのは、最初の時期には重要かもしれない
5)文字変換(トランスクリプションのことです)
文字越し、会話録の作成(会話分析用)など
出典:216ページ
6)テクストとしての現実:新しい事実としてのテクスト
多元的リアリティ論(シュッツ)などが参考になるか?
15.コード化とカテゴリー化(pp.219- )
理論コード化=グラウンディッドセオリー/グラウンデッド・セオリーのデータ分析法:オープンコード化、軸足コード化 (axial cording)、選択コード化(selective cording)
以下、ウィキペディアの「グラウンデッド・セオリー」か
らその手順を抜粋する
1. 分析したいものをよく読み十分に理解し、観察結果やインタビュー結果などを文字にして文章(テキスト、データ) を作る(池田によるツッコミ:その ようなものが可能になるとして!)。
2. データへの個人的な思い入れなどは排除し、 できるだけ客観的に、文章を細かく分断する(池田によるツッコミ:そのようなものが可能 になるとして!)。
3. 分断した後の文章の、各部分のみを読み、内容を適切に表現 する簡潔なラベル(あるいは数字、コード)をつける。このラベルは、抽 象度が低い、なるべく具体的な概念名とする。
4. 似たもののラベル同士はまとめ、上位概念となるカテゴリーを作り名前をつける。これらの作業を「オープン・コーディング(Open coding)」という。
"Open coding
in grounded theory method is the analytic process by which concepts
(codes) to the observed data and phenomenon are attached during
qualitative data analysis. It is one of the 'procedures' for working
with text as characterized by Strauss (1987) and Strauss and Corbin
(1990). Open coding aims at developing substantial codes describing,
naming or classifying the phenomenon under consideration. Open coding
is achieved by segmenting data into meaningful expressions and
describing them in single word to short sequence of words. Further,
relevant annotations and concepts are then attached to these
expressions.[1]" - Open
coding.
5. ある1つのカテゴリーと複数のサブカテゴリーを関連付け、現象を表現する。サブカテゴリーとは現象について、いつ、どこで、どん なふうに、なぜ等を説明するものである。これらの作業を「アクシャル・コーディング(Axial coding)」という(池田によるツッコミ:アクシャルとは axial=軸になるという意味である)。
"Axial coding is the breaking down of core themes during qualitative data analysis. Axial coding in grounded theory is the process of relating codes (categories and concepts) to each other, via a combination of inductive and deductive thinking." - Axial coding.
6. アクシャル・コーディングでつくった現象を集め、カテゴ リー同士を関係づける。これが、社会現象(social phenomenon)を説明する理論となる。この作業を「セレクティブ・コーディング」という。
■オープン・コーディング(Open coding)=オープンコード化(221):センテンスの解体:それに辞書的定義を延々と付加する。コード=概念で、メモや概念レッテルをはり つける作 業。行ごとのコード化の手法もある(223)。
■アクシャル・コーディング(Axial coding)=軸足 コード化(axial cording):複数のコードをひとつのサブカテゴリーに関連づける作業(226):大きなテーマの移行と考えればよろしい。
■選択コード化(selective cording):抽象度の高い、アクシャル・コーディング=軸足コードをくりかえす。
テーマ的コード化
《本日の課題》(独立したページもあります)
「テキストの分析とオープンコード化の実習」 pdf(text_separetion_coding_tech2018.pdf) パスワードはかかっていませんどなたでもご利用できます。A3サイズでプリントするとちょうどよいサイズになります。
(原文)クラインマン,アーサー『病いの語り』江口重幸ほか訳,Pp.4-5,東京:誠心書房、1996年
「病いの問題(illness problem)とは、症状や能力低下がわれわれの生活のなかに作り出す根本的な困難のことである。たとえば、階段を上がって寝室に歩いてゆくことができ ないかもしれない。あるいは座って仕事をしているあいだ、腰痛のために注意が散漫になるという経験をするかもしれない。頭痛のために宿題や家事に集中する ことができず、誤りやイライラにむすびつくこともあるかもしれない。あるいは性的不能におちいって離婚になってしまうかもしれない。他の誰にも自分の痛み は見えないし、したがって、能力低下が現実のものだと客観的にはっきりと認めてもらうこともできないために、強い怒りの感情をもつこともあるかもしれな い。結果として、われわれは、自分の訴えが信用してもらえないことに気づき、自分が絶えざる痛みのなかにあることを証明しなければならぬ苛立たしい重圧 (プレッシャー)を経験することになる。われわれは、意気消沈し、よくなろうとする希望を失うようになるかもしれない。あるいは、死んだり寝たきりになっ たりすることの恐怖によって抑うつ的になるかもしれない。失った健康、変形した身体イメージ、危ういまでに低下している自尊心を嘆き悲しむ。あるいは、外 観がそこなわれたという理由で恥ずかしいという気持をいだくかもしれない。こうしたものすべてが病いの問題なのである」。
センテンス単位の分割。
1.病いの問題(illness problem)とは、症状や能力低下がわれわれの生活のなかに作り出す根本的な困難のことである。
2.たとえば、階段を上がって寝室に歩いてゆくことができないかもしれない。
3.あるいは座って仕事をしているあいだ、腰痛のために注意が散漫になるという経験をするかもしれない。
4.頭痛のために宿題や家事に集中することができず、誤りやイライラにむすびつくこともあるかもしれない。
5.あるいは性的不能におちいって離婚になってしまうかもしれない。他の誰にも自分の痛みは見えないし、したがって、能力低下が現実のものだと客観的に
はっきりと認めてもらうこともできないために、強い怒りの感情をもつこともあるかもしれない。
6.結果として、われわれは、自分の訴えが信用してもらえないことに気づき、自分が絶えざる痛みのなかにあることを証明しなければならぬ苛立たしい重圧
(プレッシャー)を経験することになる。
7.われわれは、意気消沈し、よくなろうとする希望を失うようになるかもしれない。
8.あるいは、死んだり寝たきりになったりすることの恐怖によって抑うつ的になるかもしれない。失った健康、変形した身体イメージ、危ういまでに低下して
いる自尊心を嘆き悲しむ。
9.あるいは、外観がそこなわれたという理由で恥ずかしいという気持をいだくかもしれない。
10.こうしたものすべてが病いの問題なのである。
/の入れ方は、恣意的である。
《この日の課題》
グラウンディッド・セオリーに逆アセンブリは可能か?というテーマで課題しました。
インフォームド・コンセント(IC)で終わったと言わ れる死のアウェアネス理論にまだ潜在可能性を発見ましたねぇ!
教科書、Pp.228-229.
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リスト
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1.質的研究とはなにか
2.理論的立場
3.テクストの構築と理解
4.プロセスと理論
5.研究設問
6.フィールドへの参入
7.サンプリング戦略
8.半構造インタビュー
9.データとしてのナラティブ
10.フォーカスグループインタビューとディスカッション
11.口頭データ収集法の概観
12.観察、エスノグラフィー、視覚データ法
13.視覚データ収集法の概観
14.データの文書化
15.コード化とカテゴリー化
16.シークエンス分析
17.テキスト解釈法の概観
18.質的研究の基礎づけと価値基準
19.質的研究の執筆
20.質的研究におけるコンピュータ
21.質的研究と量的研究
22.質的研究の質
リンク(→「質的研究のデザイン」)
文献
その他の情報
Copyleft, CC, Mitzub'ixi Quq Chi'j, 1997-2099
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