On Qualitative Study and Ethnography:01
学習の意義:次の言葉を説明してみよう ・焦点化インタビュー focused interview ・半標準化インタビュー semi-standardized interview ・問題中心インタビュー problem-centered interview ・専門家インタビュー expert interview ・エスノグラフィック・インタビュー ethnographic interview ・ナラティブ・インタビュー ・エピソード・インタビュー |
第3回 2017.04.24/ 2018.04.23
8.半構造化インタビュー
9.データとしてのナラティブ
++++++++++++++
++++++++++++++
インタビュー:OEDによると、フランス語の、entre- (enter-) + voir
より由来するので、「あなたどうしの間に」という意味に由来。2人が出会う表現はエンカウンターという語彙があるが、これには偶発的な出会いも含まれる。
インタビューとは、日本語の語彙としての定着したように、事前の申し込みがあり、対話者(あるいはより具体的には質問者=インタビュアーと応答者=インタ
ビュイー)が面と向かって対話するというのが基本である。さまざまな面接でも「インタビュー」というのがあるが、これも、対話を通して、質問者が応答者か
らの何らかの情報を聞き出す行為である。質的調査における基本的な手法のひとつ。
OEDから
interview,
n. (ˈɪntəvjuː) [a. F. entrevue (earlier entreveue, 1498 in Godef.
Compl.), verbal n.
from entrevoir to have a glimpse of, s'entrevoir to see each other, f.
entre- (enter-) + voir:—L. vidēre to see. (Mod.F. has taken interview
from English in sense 1 c.)]
1. a.1.a A meeting of
persons face to face, esp. one sought or arranged
for the purpose of formal conference on some point.
In early times, esp. a formal or ceremonial meeting
of princes or great persons, such as that of Henry VIII and Francis I
at the Field of the Cloth of Gold.
《初出例》
α 1514 Dk. Suffolk in Ellis Orig. Lett. Ser. ii. I.
248 Your Grace understode how well mynded and desirous he was for th'
Enterview to be had, betwixt your Highnes and hym.
OEDのには、この語義以外に複数があるが、その多くは使われなくなっている。
++++++++++
■用語法の確認
1)非構造化質問:なんでもあり——あるいは知りたいという意図を満たすためにあらかじめ心的(=論理的)準備をおこなわない方法
2)半構造化質問:応答する反応をあらかじめ想定した上で、入手したい答えを導く見方の部分が《その半分》。想定できなかった応答する反応 に、臨機応変に対応できるような方法論的パッチをあてるための未来の戦術が《残り半分》。
3)構造化質問:期待される回答に、誘導するような設問と応答を設計する質問。口頭によるアンケート聴取とほとんど変わらない面もある。論
理的に設計するので、意想外の回答はナンセンスあるいは、ちゃぶ台返しとなりデータにならない時もある。構造化になじまなかった場合には、2)や1)に展
開できるような柔軟性も必要かと思われる。
++++++++++
●用語法の整理 ・焦点化インタビュー focused interview ・半標準化インタビュー semi-standardized interview ・問題中心インタビュー problem-centered interview ・専門家インタビュー expert interview ・エスノグラフィック・インタビュー ethnographic interview ・ナラティブ・インタビュー ・エピソード・インタビュー |
8.半構造化インタビュー:semistructure / semi-structured interview,
Pp.94- :半構造化の用語の最大の問題点は「構造」の定義に比して、半分構造化されたという表現の「あいまいさ」にある(「インタビュー技法」「インタビューとは?」も参照のこと)。
8.1 焦点化インタビュー focused interviewも
半構造化の部分の「曖昧で自由度」のある部分を特徴を利用して、話題の探索を焦点化して聞き出す手法(実例:96ページ,99-100
ページ)
8.2 半標準化インタビュー:semi- strandardized interview, Pp.102-
シェーレとグレーベンの「主観的理論」がとりあげられる。(どうでもいいジャンクな議論だとは思うが)
構造敷設テクニック(structure laying technique):インタビュアーの構造化したものがインタビュイーに2回目以降提示されてフィードバックをおこなわせるもの
その詳細なダイアグラムは107ページをみよ。
インタビュイーの側の主観的理論を浮かびあがらせるものだが、インタビュアーの暗黙の知識構造には無反省ではないか?(これが上記で
「ジャンク」と言った私の理由)。この限界についてはフリック109ページにある。
8.3 問題中心インタビュー:problem-centered
interview, pp.109-
これもドイツ系の方法論。質問とナラティブ刺激を組み合わせたインタビューガイドを利用する方法:この方法を名乗るかそうでないかは別 にしてこれは概念としても実践としても使える。だが要は「臨機応変にやれ!」ということなのだ。
111ページに質問文があり、大いに参考になる。
8.4 専門家インタビュー:expert interview
この特徴は、インタビュイーが専門家=エキスパートということだ。エキスパートは発話のコントロールが難しい(=インタビュアーも質的
調査の専門家であるのと同様に!)。また、専門家は門外漢に教えてやろうとする気概があるか、どうせ素人のにはわかりっこないと悲観的になるか、それと
も、さまざまな卑近な例をつかって、説明してやろうとして、一種の、専門家トークと素人トーク(→バーンスティンの精密コードと限定コードの議論を参照)の話
法のバイリンガル状態になり、データの質としては興味深いが、フォーマルな議論として整理し、論文の部分に落とし込んでいくのは、苦労する。
8.5 エスノグラフィック・インタビュー
ethnographic interview
スピンドレイ(1980)を参照にせよ書いている。開放系の会話になるので、それを(焦点化するような)インタビューをとるための「状 況」をつくるのかが、難しいと117ページ指摘してある。
エスノグラフィーは、民族誌とも呼ばれる。エスノグラフィーとは、 フィールドワークと いう経験的調査手法を通して、人々の社会生活について具体的 に書かれた「体系的体裁によって」整えられた記述のことである。
8.6 半構造化インタビューにおける仲介とかじ取りの問題
半構造化という中途半端なセッティングのなかでどのように有効にデータを抽出するのかということについて、あれこれ書いているが、具体 性に欠け、中途半端に上空飛翔的な解説をしているためにわかりにくい。こういう表現は、初学者に不要な不安をまき散らすので、よくないと私(池田)は思 う。
教訓は118ページの3項目であろうが、私が翻訳=意訳=曲解しなおすと、1)不確かな状況に対応するためにインタビュアーはインタ ビューガイド(どんなことをどのように聞くのかをリスト化したもの)を用いたほうがよい。2)半構造というあいまいで不確かな状況のなかにおかれたり、イ ンタビューガイドをスキップすると不安になるので注意が必要だ=これは場数を踏んで経験知を積むほうがよろしい。3)インタビュイーの多くは忙しいので、 さっさと終わってほしいと思うことがあり、インタビュアーはまだ重要なことが聞けないというプレッシャーがかかり、両者が噛み合わないことがある=僕(池 田)は宝くじのように、やっても大概は得られないが、でもヤラナイと何も手に入れられない(=僕は「失敗のデータ」の一つで、トラウマにするよりも肥しに すべきだというのが先達からの意見)ので、インタビューがうまくいかなくても、それで当たり前と思うべしとアドバイスしている。
フリックは書けないだろうが、僕を含めて多くの専門家はこう君にアドバイスするだろう:「インタビューのコツ? 十分準備をして、かつ
場数を踏んで、失敗から学び、そして、最後はリラックスすることだ!」と。この教科書には、そのことが書かれていない。残念だ。『論文の技法』のハワー
ド・ベッカーなら僕たちと同じ意見だろう。
9.データとしてのナラティブ
ナラティブは、半構造インタビューや、非構造インタビューのなかで、インタビュイーが語る「ある一定の形態を持った物語」のことである。ナ
ラティブは「物語」とも「語り」ともいわれる。
9.1 ナラティブ・インタビュー narrative
interview
こんな方法論があるのか、僕(池田)は知らなかった。どうでもいい形式的な言挙げのように思える。ただし、リーマンとシュルツ (1987)によると、ナラティブを発生させるような質問があるそうだ(例:124ページ)。
実際のナラティブとその会話データの表示は127-128ページを参照。こういうのをトランスクリプト(発語録)と読んで、資料体 (コーパス)として扱うという。
「インタビュー実施の際の問題」の中に、インタビュアーもインタビュイーにも、ナラティブはインタビューにおける情報収集ではないとい う認識をもつ人がいて、自由に語ってくれないことがある。インタビューは、比較的発語のやりとり、つまり、言語コミュニケーションとして理解されるが、ナ ラティブは、太古の昔より古老が語る/あるいは語り部が悲惨なコミュニティの歴史を語るような、ストーリーをもった語りとしてみなされるので(私も「一定 の形態」という見方をナラティブに押しつけていることを思い出されたし!)、インタビュイーが固まったり、うまく語れなくてストレスをもつことがある。し かし、インタビュアーはそんなことに畏れてはいけない。相手の話を上手に引き出すことは、インタビュアーが方法論をきちんと学べばできるものではなく、イ ンタビュアーとしての君の魅力や性格、ときには偶然の作用の結果として、うまくいくこともあるし、いかないこともある。ほとんど再掲だが、僕の意見は、こ うだ:「ナラティブ・インタビューのコツ? 十分準備をして、かつ場数を踏んで、失敗から学び、そして、最後はリラックスすることだ!」
●ナラティブ研究の落とし穴(「ナラティブには気をつけろ!」より) ■理論編 1.意図の詮索 2.ナイーブな実在論 3.構成主義 4.個人への還元 ■その実例 1.「彼らは自分たちのストーリーをリアルに語ってくれた('They really told me their story')」 2.「このことについて私に語ることは、彼らにとって治癒的だったと私は考える('I think it was therapeutic for them telling me about this')」 3.「このようなことが起こったという点で、彼らはよい実例になっている('They were a good example of What it was to be like this')」 4.「これこそがまさに彼らが意味しようとしたことなのである('This is what they meant by it:)」 |
9.2 エピソード・インタビュー
エピソードインタビューについて、フリックはきちんと書くべきだったと思うが、133-134ページに、方法にまつわる、それらしい記 述があるので参照してほしい。
エピソードインタビューがどんなものかは、そのエピソードのコーパスの事例は136-139ページの「日常生活におけるテクノロジーの 変化」(この「元・女の子」の話は短い小話だが面白い——ただし長い断片のなかの一つなので)と「エピソード・インタビューの質問文の例」という実例があ るので参照してほしい。
■母の言う
ことは本当だ!(ダニエル・カーネマン)——2002年
のノーベル経済学賞(=アフレッド・ノーベル記念スウェーデン国立経済銀行経済学賞)受賞のダニエル・カー
ネマンが7,8歳頃に経験した第2次大戦中のパリでの話である。 「この頃のことでひとつ、今でも鮮明に覚えていることがあるのですが、このエピソードも豊かな陰影に彩ら れています。あれは確か1941年の終わりか、42年の始め頃、当時ユダヤ人は「ダビデの星」という星の形をした印を身につけなければならず、また夕方六 時以降は家から出てはならないことになっていました。その日私はキリスト教徒の友だちの家に遊びに行っていて、帰りが遅くなってしまいました。そこで、茶 色のセーターを裏返しにして着て、家までの数ブロックを歩きました。人っ子一人いない道を歩いていると、ドイツ人兵士がこちらに近づいて来るではありませ んか。一番気をつけなければならないと言い聞かされていた黒い制服の兵隊でした。黒い制服は、ナチス親衛隊の隊員だったのです。できるだけ早足で脇を通り 過ぎようとするとその兵隊がじっと私を見ているのに気づきました。そして、なんと私を手招きしたのです。彼は私を抱え上げると、ぎゅっと抱きしめまし た。裏返しにしたセーターの中の星に気づかれはしないかと、生きた心地もしませんでした。兵士はドイツ語で私に熱っぽく語りかけました。そしてようやく降 ろしてくれると、彼は財布を開いて小さな男の子の写真を見せ、いくらかお金をくれました。こうして無事家に帰った私は、母の言うことは本当だという確信を ますます深めたのでした。人間というものは止めどなく複雑で興味深いものなのです」[カーネマン 2011:67-68]。 |
9.3 ライフヒストリーとエピソード間のナラティブ
いろいろごちゃごちゃ書いてあるけど、以下の箇所の説明をよく読んで咀嚼すればオッケーだろう:「ナラティブ・インタビューによって包
括的なライフヒストリーのナラティブを得たいのか、あるいはエピソード・インタビューで状況と結びついたより細かいナラティブにアプローチしたいのかは、
研究設問と研究対象に照らしてはじめて決められることである。……原則論的なやり方でナラテイブを神話化するのとは違った方向に、エピソード・インタ
ビューのようにインタビュアーとインタビュイーとの対話を再び取り入れるという道がある」(フリック 2002:141)。」
まとめ
++++++++++++++
■練習問題
以下は、非喫煙者であることが期待されている未 成年に対するアンケート調査の質問項目のリスト(全部ではなく、また一部改造してある:出典後述「嘘とインタビュー(実習)」)である。
この実習の教育学的意味は、禁煙教育のみならず、禁煙教育の教材や研究を素材に使って、現代の専門家における《禁煙の意識化教育概念と実践》の 社会・文化的構築について考えるものです。
■資料(パスワードなし:A3用紙での印刷を推奨)mitzubixi180423.pdf
あなたはタバコを吸っていますか? あなたのまわりでタバコを吸う人はいますか? (非喫煙者の)あなたはタバコを吸ってみたいと思いますか? (喫煙者の)あなたはタバコを吸うのをやめたいと思いますか? はじめて吸ったのはいつですか? その時にどう思いましたか? タバコに害があることを知っていますか? そのことをどう考えていますか? まわりでタバコの煙を吸った人にも害があることを知っていますか?そのことをどう考えて/思っていますか? タバコがとてもやめにくいことを知っていますか? そのことをどう考えて/思っていますか? タバコが勉強や運動に悪いことを知っていますか? そのことをどう考えて/思っていますか? 周りの人がタバコを吸うことをどう思いますか? そのことをどう考えて/思っていますか? タバコを吸う人は、やめたくてもやめられないでいると思う。 そのことをどう考えて/思っていますか? タバコを吸うことは大人っぽくてかっこいいと思う。そのことをどう考えて/思っていますか? タバコはお茶やコーヒーのように味や香りを楽しむためのものだと思う。そのことをどう考えて/思っていますか? タバコを吸う生活も大切にするほうがよいと思う。 そのことをどう考えて/思っていますか? タバコを吸うと生活が楽しくなることもあると思う。 そのことをどう考えて/思っていますか? タバコを吸うと、からだや気持ちにいいこともあると思う。 そのことをどう考えて/思っていますか? タバコ吸うと、気分がスッキリすることもあると思う。 そのことをどう考えて/思っていますか? タバコを吸うと、頭のはたらきがよくなると思う。 そのことをどう考えて/思っていますか? お医者さんや学校の先生は『タバコを吸ってはダメ』と言いすぎると思う。そのことをどう考えて/思っていますか? 灰皿が置いてあるところなら、タバコを吸ってもよいと思う。 そのことをどう考えて/思っていますか? 自己責任において、かつリスクを自分で負うなら、タバコを吸ってもよいと思う。 そのことをどう考えて/思っていますか? 自分は将来タバコを吸っていると思う。 そのことをどう考えて/思っていますか? 自分は、このあと一生のうち、少なくとも一度くらいタバコを吸うと思う。そのことをどう考えて/思っていますか? 【先週/今週の授業について感想を述べてみよう】 |
■出典
後藤美和ほか(2015)「中
学校1年生を対象にとした喫煙に対する意識と喫煙防止授業の評価」『社会薬学』34(1): 34-41.
++++++++++++++
リスト
++++++++++++++
1.質的研究とはなにか
2.理論的立場
3.テクストの構築と理解
4.プロセスと理論
5.研究設問
6.フィールドへの参入
7.サンプリング戦略
8.半構造インタビュー(pp.94- )
フォーカス・インタビュー
半標準化インタビュー
問題中心インタビュー
専門家インタビュー
エスノグラフィック・インタビュー
半構造化インタビューにおける仲介と舵取りの問題
9.データとしてのナラティブ(pp.122- )
ナラティブ・インタビュー
エピソード・インタビュー
ライフヒストリーとエピソード間のナラティブ
10.フォーカスグループインタビューとディスカッション
11.口頭データ収集法の概観
12.観察、エスノグラフィー、視覚データ法
13.視覚データ収集法の概観
14.データの文書化
15.コード化とカテゴリー化
16.シークエンス分析
17.テキスト解釈法の概観
18.質的研究の基礎づけと価値基準
19.質的研究の執筆
20.質的研究におけるコンピュータ
21.質的研究と量的研究
22.質的研究の質
リンク
リンク(調査法や学説史一般について)
学生向けのリンク
文献
その他の情報
Copyleft, CC, Mitzub'ixi Quq Chi'j, 1997-2099
Do not paste, but [Re]Think our message for all undergraduate students!!!