民俗学とプラグマティックな医学について
On Pragmatic Medicine and Japanese
Folklore studies
プラグマティック・マ クシム:「ある対象について私たちの考えを完全に明晰にす るために、その対象が実際どんな結果をふくんでいるか、――いかなる感覚がその対象から期 待されるか、そしていかなる反応を用意しなければならないか、を考えさえすればよい。こうした結果がすぐに生じるものであろうと、ずっと後におこるもので あろうと、こうした結果について私たちの概念が、その対象に関する私たちの概念のすべてである」——ウィリアム・ジェイムズ(魚津[訳] 2006:58)
以前は「論理的に真実」と「経験的に妥当」という正当化の主張の表明が、今日では「エビデン スがある」という言い方に変わっている。すべて「俺/私の主張は正しい」ということらしいが結局のところ《そうあってほしい》という虚しい希望の表明なの だ。——垂水源之介(FaceBook)
■梗概
民俗医学/医療について、民俗学者で歌人でもあった
今村充夫の著作『日本の民間医療』(1983)の検証をおこないます。次に、世界保健機関(WHO)が評価した民俗/民間/代替医学の利用とエビデンスに
ついてについて考えます。両者の間にある共通理解はなんでしょうか。それは「民俗医療=医学には一定の効果がある」という主張です。これをめぐって生物医
学は「主観的/心理的な効果」や「プラシーボ効果」という卑近で姑息な説明をするのみで民俗医療=医学の「意味」について真剣に考えることはしませんでし
た。しかしながら、近年の進化医学の議論——寿命の限界や病気にかかることは生物進化学的に「意味」があるという議論——や遺伝現象におけるエピジェネ
ティクス(=学問領域名)の発達は、医学研究における病気や寿命に対処する個体の働きの多様性と複雑さの理解に新しい光を投げかけました。この現象は「エピジェネシス」と呼ぶ。このような民俗医療=医学の復権
の背景にあるのは、人間が医療というものを発見し、その技を磨いてきた背景に「施術(治療)の効果がある」という現場感覚と、それに対するたゆまぬ理解と
説明の歴史、すなわち「プラグマティックな医療=医学」の伝統があったからです。プラグマティックな医療=医学とは、ある施術について、その対象が実際ど
んな結果をふくんでいるか、いかなる感覚がその対象から期
待されるか、そしていかなる次なる施術を用意しなければならないか」について、ひたすら実践することの体系=システムのことです。このようなプラグマ
ティックな医学という概念規定のもとに、民俗医療/民間医療の未来について「提言」したいと思います。
【今村充夫(いまむら・みちお:1921- 2015):Michio IMAMURA, 1921-2015 in OCLC_WorldCat Identities】
民俗学者、歌人。(元)加能民俗の会会長、(元)石川県歌人協会会 長、(元)郷土資料館(石川県歴史博物館の前身)副館長、(元)日本民俗学会名誉顧問。折口信夫に師事。1983年(今村62歳)の時に『日本の民間医 療』弘文堂を公刊する。『日本の民間医療』は5年後に歌集『北の黒潮』を公刊するが、それを除けば最後の単著となる。
【宗田一(そうだ・はじめ)】(Hajime SODA, 1921-1996)
1921年新潟県三島郡寺泊[てらどまり]町寺泊
(長岡市)生まれ。1941年(旧制)官立金沢医科大学
薬学専門部卒業。国際日本文化研究センター所蔵の宗田文庫は、宗田一が収集した、医学史・薬学史に関する書籍、図版資料などを中心とする日本医療文化史の
資料コレクション――以上、ウィキペディア「宗田一」等(→「医療と神々」)
■クレジット:近畿民俗学会・総会・テー マ「医療民俗の躍進」公開講演「民俗学とプラグマティックな医学について」(60分)平成30(2018)年5月20日(日)13:00〜、大阪歴史博 物館4階第1研修室。
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1 On Pragmatic Medicine and Japanese Folklore Studies By Mitsuho Ikeda, Osaka University, 2018 |
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2 The Observation for the Folklore Studies as an Academic Entity |
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21 補足説明:(古典的)民俗学の限界 ++++++++++++++++++ 1)歴史的薀蓄に負うが歴史学の本業を凌駕できない。つまり歴史学に対して学問的優位性を確保できない。 2)コンテクスト(文化の文脈)についての記述ができない。古老への聞き取りや、地元在野の民俗誌家の養成と、その通信的システム(郵送)による質疑と情 報管理(柳田の手法)の限界。 3)学派による「家元」制度の再生産の旧弊ぶり。近代学問としての体質改善ができなかった。 |
●ノーマン・カズンズ
ノーマン・カズンズ『ある病いの解剖:患者が感じたもの』ノート
Anatomy of an Illness as Perceived by the Patient. 『笑いと治癒』岩波書店
0. Introduction by Rene Dubos
1. Anatomy of illness
as perceived by the patient
2. The Mysterious Placebo
3. Creativity and Longevity
4. Pain is not ultimate enemy 痛みは究極の敵ではな い(→「痛みの文化人類学」)
5. Holistic health and healing
6. What I learned from three thousand doctors
●参考:Nicholas Humphrey Interview (1/4) - Richard Dawkins
リンク
文献
その他の情報
"An ex-voto is a votive offering to a saint or to a divinity. It is given in fulfillment of a vow (hence the Latin term, short for ex voto suscepto, "from the vow made") or in gratitude or devotion. Ex-votos are placed in a church or chapel where the worshiper seeks grace or wishes to give thanks. The destinations of pilgrimages often include shrines decorated with ex-votos."
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