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ポストコロニアル

postcolonial, post-colonial

解説:池田光穂

★ポストコロニアルとは、ポスト(後の、という時間的 概念)、コロニアル (植民地的、という空間的ならびに精神的概念)という造語法によるできた形容詞で、植民地主義以降の、あるいは脱植民地状態(コロニアルな状況の後に/終 焉 後の)という意味がある。つまり、植民地主義コロニアリズム)後の、以降の秩序や状態、その後に生じる出来事一般などをさす(→「ポストコロニアリズム」)。

このポストの本来的意味は、時間的経過の概念として の、「植民地後の〜」というものに他ならない。しかし、植民地後に は、さまざまな意味が含まれており、「植民地後の独立」「主権/主体の確立」「植民地状況が終 わった」「植民地状況を脱却した/しようとする」などの意味の派生が生じており、ポストコロニアルという用語を意識的に使う人たちは、そのようなポストコ ロニアルという用語が、多義的に使われることを承知で、あるいは確信犯的に、この用語を使っている。

☆そこから転じて、政治的議論としての(1)ポストコロニアリズムpostcolonialism) とは、コロニアリズム(植民地主義,colonialism) あるいは帝国主義(imperialism) の伝統が、その後(post-)の歴史的展開なかでも、さまざまな形を通して継続しているという、時間的、空間的、そして精神的概念をめぐる議論のことを さす。そしてポストコロニアル をめぐる学術的議論としての(2)「ポストコロニアリズ ム(ポ ストコロニアル理論:Postcolonialismと も)とは、植民地主義や帝国主義の文化的、政治的、経済的遺産を批判的に学術的に研究するもので、植民地化された人々とその土地に対する人間の支配と搾取 の影響に焦点を当てている。この分野は1960年代に台頭し始め、植民地支配を受けた国の学者たちが植民地支配の残存する影響について論文を発表し、(通 常はヨーロッパの)帝国権力の歴史、文化、文学、言説に対する批判的理論分析を展開した」という。

したがって、ポストコロニアルとは、(1)コロニア ル(植民地状況)な状況や支配が終わった後の秩序や世界のことを意味すると同時に、ポストという時間性を引き受けて、現象面から(2)コロニアル(植民地状況)な状 況や条件、あるいは支配の形態が現在もなお引き続き存続している、時代ならびに社会概念のことを意味する。

そして、例えば「私たちはポストコロニアルな存在になれるのか?」という審問は、上掲の「コロニアル(植民地状況)な状 況や条件、あるいは支配の形態が現在もなお引き続き存続している」状況のなかで、「コロニア ル(植民地状況)な状況や支配が終わった後の秩序や世界」を創造し、そのなかで生きるためには、「今何が求めれらているのか?」という、実 践上の課題を我々に突きつけるのである。

☆「ポストコロニアリティ(post-coloniality)」とは?

「ポストコロニアル」とは、上掲のように植民地後を あらわす形容詞が、名詞化したもので、植民地後の時間的社会的位相をさすと同時に、そのような時間的社会的位相の「性質」をあらわすと同時に、そのような 時間的社会的位相が、到来しているのか?という「批判的分析」が含まれ、次第に「ポストコロニアリズム」における議論に接続していく過程でもある。ポスト コロニアル の名詞化であり、その内実や正確性を表現する「ポストコロニアリティ」とは、ポストコロニアルとはなにか?その具体的事象やより抽象化した概念化そのもの をさす用語である。

★ポストコロニアル条件における濫喩

カタクレーシス 〔Catachresis; 濫喩〕:カタクレシス(ギリシャ語のκατάχρησις「乱用」から)とは、本来は意味上の誤用や誤りを意味する、 例えば、「militate 」を 「mitigate 」に、「chronic 」を 「severe 」に、「travesty 」を 「tragedy 」に、「anachronism 」を 「anomaly 」に、「alibi 」を 「excuse 」に、といった具合である。ジャック・デリダは、カタクレシスとは、あらゆる意味体系の一部である元来の不完全性を指す。彼はメタファーとカタクレシスは 哲学的言説の根拠となる用語であると提唱している。ここでのガヤトリ・スピヴァクは、「女性」や「プロレタリア」の「真の」例が存在しないにもかかわら ず、ある集団、例えば女性やプロレタリアートを代表すると主張する「マスター・ワード」にこの言葉を適用している。同様に、人々に押し付けられ、不適切と みなされる言葉は、このようにカタクレシス、つまりその意味と恣意的なつながりを持つ言葉を示すと、みなされるのである(→「スピバックの「サバルタンは語れるか」入門」)。

I would annex the planets if I could - Cecil Rhodes (from PUNCH, public domain)

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