世界の先住民について知る
World of Indigenous Pooples
the Kavalan people, Taiwan, past (1896) and present (2015)
池田光穂
【はじめに】★『研究』という言葉自体
が、先住民の言語の中で最も汚れた言葉の一つである——リンダ・トゥヒワイ・スミス『脱植民地化の方法論:研究と先住民』(1999:
1).——The word itself, 'research', is probably one of the dirtiest words
in the indigenous world's vocabulary(Smith 1999:1 ).
先住民学(Indigenous Studies) は、19世紀に北米ではじまる北米先住民の民族学研究からはじまるが、長く「先住民(先住民族)」 を研究対象にする非先住民あるいは(先住民の参加に おいても)民族学/民俗学の専門教育をうけた専門家による研究であり、それらの研究の成果が「直接」先住民への知識や福利に寄与することは稀であった。し かしながら、先住民の人権、法的権利についての長い間の論争や(犠牲者を伴う)抵抗運動という長い歴史的経験を通して、先住民学はたんに先住民を研究する という自己目的のみならず、先住民による/先住民のための/先住民の研究であるべきだと、国際社会はようやく認識しつつある。現在では、先住民の当事者が 自らの来歴を知り、そのアイデンティティを探求する権利を行使する学習の場としても、ま た先住民/非先住民の区分の違いを超えて、先住民による/先住民の ための/先住民の研究への学問的かつ実践的介入の必要性を、世界の国家は認識せざるをえない。
そのようななかで、2007年「先住民の権利に関する国際連合宣言(Declaration
on the Rights of Indigenous Peoples, UNDRIP, A/RES/61/295, 2007)[全文和訳]」が、国連総会で採択された。
世界の先住民の数は、あくまでも推計だが、3億7千万人、70カ国以上に暮らしていると言われる※。誰が先住民であるかという認定は、これまで の世界労働機関や国連でさまざまな形で議論されてきたが、概ね国際世論が認定するのは、先住民自身が決めるものであるという自己決定の考え方が一般的である。また、そのようなことを正当化する先住民の文化や言語に関す る歴史的資料や(社会的差別も含めて)先住民の慣習的認定という傍証的事実も必要であるが、それは、先住民自身の自己決定を尊重する必要がある。
※【課題】なぜ、世界の先住民の人口が、さまざまな研究者や国家統計において異なるのか、みんなで、その原因を探してみよう。
日本は衆参両院で、アイヌ民族を日本の「先住民族」であることをみとめた「アイヌ民族を先住民族とすることを求める決議」ともに2008年6月
6日(衆
議院/参議院)
をおこなったにもかかわらず、日本の大学においては、盗掘を含むアイヌの遺骨を、実験研究用に収集保管し、アイヌ側からの遺骨返還をめぐってもなかなか大
学行政全般を管理・統括する文科省ならびに日本国政府は、それに真摯に応じようとしていない(→「アイヌ遺骨等返還の手続きについて考えるページ」)。遺骨問題や、先住民の文化遺産
の返還については、日本での対応のみならず、米国の「ネイ ティブ・アメリカン墳墓保護と返還に関する法律(NAGPRA)」の施行(1990-
)などを除いて、それほどスムースにいっているわけではない。
このような現在の、先住民問題のホット・イシューを理解するためにも、まず、先住民とは誰か?また先住民「問題」が、なぜ世界でこれほど、重要 なテーマになったのかについて、大まかなアウトラインを知ることが[地球市民にとっては]重要である。
このページは「世界の先住民について知る(リテラシーG)2019:Literacy G: World of Indigenous Pooples, 2019」として裏のシラバス(=うらバス)として始め たものですが、現在では、自学自習用の資料として残しています
授業担当者:池田光穂(Mitsuho
Ikeda) |
池田光穂 |
Literacy G: World
of Indigenous Peoples, by Mitzuho Ikeda |
履修対象/Eligibility |
1,2,3,4,5,6年生 |
Both graduate
school students and undergraduate students |
開講時期/Schedule |
【現在:オンデマンドで学べるように改造
中です!】 |
Summer Terms |
講義室/Room |
豊中キャンパス・全学教育推進機構内
(→COデザインセンター) |
|
講義題目/Course Name |
リテラシーG(世界の先住民について知
る) |
Literacy G: World
of Indigenous Peoples |
授業の目的と概要/Course
Objective |
国
連は2007年に「先住民の権利に関する国際連合宣言(Declaration
on the Rights of Indigenous
Peoples, UNDRIP, A/RES/61/295,
2007)」を総会で採択し、先住民の存在を国際承認している。にもかかわらず、各国の政府や大学の教員などの知識人と呼ばれる人たちですら、先
住民を
「人種」「エスニシティ(民族)」「ネーション(国民)」のカテゴリーで理解したり、社会的構成概念として、彼らの人間存在としての唯一性を相対的に見よ
うとしている。この授業は、これまでの先住民に対する不平等な社会的取扱い、差別、偏見という世界的(worldwide)なトレンドに抗して、国際承認
されている先住民の固有性を明確にし、正確に先住民のことを理解し、最終的に世界の人々の多様性と人間としての普遍的共通性についての認識に到達しようと
することを目的とする。 |
Who
are indigenous peoples? How do anthropologists study (not investigate)
with indigenous peoples in their "fieldwork"? This course will be
particularly attentive to these questions. Before attending our cource,
you can access UN's "Declaration on the Rights of Indigenous
Peoples, UNDRIP, A/RES/61/295,
2007," in official site URL https://goo.gl/xGcr6R
|
学習目標/Learning Goals |
1.先住民概念が国際承認される以前の先
住民の歴史と社会のあり方についての理解を確認することができる。 2.先住民の権利に関する国際連合宣言(UNDRIP, A/RES/61/295, 2007)を読み、その内容を理解するのみらず、条約制定までのプロセスについて知ることを通して、現代の人権概念 がどのように形成されるのかについて、理解することができる。 3.先住民社会、文化、政治、経済などの具体的な理解を深め、先住民と良好な社会的共存関係を保てることができるための、社会的条件について考えることが できる。 |
1. Explain the
differences of the difinitions of indigenos people between before and
after the UNDRIP. 2. Critical analyze the rise and fall of racist concepts on indegnous people. 3. Explain the present situation of indigous people. |
履修条件・受講条件
/Requirement; Prerequisite |
どなたでも受講できます。 |
Both undergraduate
and postgraduate students will be welcomed! |
特記事項/Special Note |
特にありません。 |
none |
授業計画/Special
Plan (回)題目/Title:内容/Content |
1. 先住民の権利に関する国際連合宣言を理解する/宣言の制定過程を再現する 2. 先住民概念が国際承認される以前の先住民の歴史と社会のあり方についての理解 3. ケーススタディーズ(1):中央アメリカのマヤ系先住民(その壱) 4. ケーススタディーズ(2):中央アメリカのマヤ系先住民(その弐) 5. ケーススタディーズ(3):アイヌ先住民(その壱) 6. ケーススタディーズ(3):アイヌ先住民(その弐) 7. アイデンティティ・ポリティクスと政治的アイデンティティ 8. 多文化主義の可能性と限界:先住民の現在と「先住民学」 |
|
授業形態/Type of Class: |
レクチャー、課題解決法を用いたアクティ
ブラーニング、 |
Seminar subject |
授業外における学習
/Independent Study Outside of Class |
別途準備している「ウラバス」(https://goo.gl/97XFZ9)を参照にして、さまざまな情報にア
クセスしてください。使い方は、授業中に説明します。 |
Matters such as the downloading of materials for revision and changes to the schedule will be notified on my “outside domain of the official syllabus” page linked to on the web page as URL https://goo.gl/97XFZ9 |
教科書・教材/Textbooks |
ケン・ハーパー『父さんのからだをかえし て』鈴木・小田切訳、早川書房、2001年/Kenn Harper, Give me my father's body.Blacklead Books , 1986 | See my “outside domain of the official syllabus” page linked to on the web page as URL https://goo.gl/97XFZ9 |
参考文献/Reference |
授業ならびに「ウラバス」(https://goo.gl/97XFZ9)において適宜紹介します。 |
See my “outside domain of the official syllabus” page linked to on the web page as URL https://goo.gl/97XFZ9 |
成績評価/Grading Policy |
各人で、自分用のポートフォリオを作って
管理し、中間レポート、プレゼンテーションを通して、総合的に判断します。その判断基準は、授業への参加度6割、レポートの評価点4割。 |
Comprehensive
judgment based on the class participation (60%) and report (40%) with
consideration of the class participation (= spoken contribution to
classes). |
コメント/Other Remarks |
わからないことがあればメールで聞いてみ
よう!池田光穂(rosaldo[at]cscd.osaka-u.ac.jp) この授業は科学研究費補助金「先住民の視 点からグローバル・スタディーズを再構築する領域横断研究(KAKEN)」(課題番号:18KT0005)の研究成果を授業に還元する試みです。 |
After beginning
the lecture, the useful information for students will be opened as URL
https://goo.gl/xPqYKz |
キーワード/Keywords |
先住民、UNDRIP、人権、民族的マイノリティ、アイヌ、マヤ、アイデンティティ・ポリティクス | Indigenous people,
UNDRIP, ethnic minorities, Ainu, Maya, identities politics |
受講生へのメッセージ/Messages
to Prospective Students |
この授業
テーマは、国連の持続可能な開発目標10の課題「人
や国の不平等をなくそう」に関連するテーマ授業です。 |
Do
you know the motto printed in T-shirt of a used book store in Berkeley,
California, "Moe's" that I found ? - "Reading is Sexy." It's Great that
I think. I will add in our class, "Reading and Discussing are also
Sexy, Philo-Sophies." This is my motto of objectivity of this class. |
●ケン・ハーパー『父さんのからだをかえして』鈴木・小田切訳、早川書房、2001年/Kenn Harper, Give me my father's body.Blacklead Books , 1986
1. 6月17日 18:00-21:00 |
ケン・ハーパー『父さんのからだを返して』鈴木・小田切訳、早川書房、
2001年 0. 序、はじめに 1. ピアリーの家来 2. 鉄の山 3. アメリカ到着 |
課題文献 givememyfathersbody-01.pdf BR0077_045-071.pdf |
関連リンク ・先住民、わかっているようでわからない存在(→UNDRIPs) ・私にとっての2つの存在 ・ダーウィンのフエゴ島民 ・ミニック |
2. 6月24日 |
4. ニューヨークで孤児になったエスキモー 5. アメリカ人ミニック 6. ウォレス事件 7. 詐欺 |
givememyfathersbody-02.pdf |
・先
住民(先住民族) ・先住民とは誰か?について真剣に考えてみよう! |
3. 7月1日 |
8. 「涙の人生に運命づけられて」 9. 父さんのからだを返して 10. 科学のために 11. 「とても哀れなミニックの境遇」 |
givememyfathersbody-03.pdf |
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4. 7月8日 |
12. 「絶望的な流浪の境遇」 13. 北極計画 14. 逃亡 15. 「破棄できない契約」 |
givememyfathersbody-04.pdf |
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5. 7月15日(休日) |
国立民族学博物館の見学【実施要項】 |
国立民族学博物館への見学の実施要項です! |
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6. 7月22日 |
16. グリーンランドへの帰郷 17. ふたたびエスキモーとして 18. チューレ基地 19. ウィサーカッサク:大嘘つき |
givememyfathersbody-05.pdf |
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7. 7月29日 |
20. 指名手配:生死を問わず 21. クロッカーランド探検隊 22. ふたたびブロードウェイに 23. 北の国・エピローグ |
givememyfathersbody-06.pdf |
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8. 8月5日(予備日) |
(予備日) |
世
界の先住民について知るサイト内検索(https://bit.ly/3C3Pi5o)
の結果 先住民か? 先住民族か?▶︎先住民(先住民族)▶︎︎先住民とは誰か?01▶先住民とは誰か?02︎▶︎︎先住民概念の擁護▶先住民表象▶︎︎︎日本政府とアイヌ先住民族▶アメリカ先住民の教訓▶︎︎新しい「先住民学」▶︎国 家とグアテマラ先住民▶先住民の権利に関する国際連合宣言︎▶我が国(日本国政府)のア イヌならびに先住民に関する認識︎▶中米先住民運動の民族誌学的研究を通した「先 住民概念」の再検討︎︎▶︎先住民と人類学▶︎︎政治的アイデンティティと先住民運動▶︎先住民の帰属アイデンティティと社会実践▶︎︎グローバル・イシューズと先住民▶︎医療は先住民に役立つのか?▶日本 における先住民[問題]︎︎▶︎先住民のアイデンティティ▶先住民運動に関する文化人類学的省察▶︎先住民コミュニティの自治▶ネイティブ・アメリカン墳墓保護と返還に関する法律︎︎▶︎▶︎︎▶︎▶︎︎▶︎▶︎︎▶︎▶︎ |
● NAGPRAに関する文献リスト
● Chip Colwell, Plundered Skulls and Stolen Spirits: Inside the Fight to Reclaim Native America's Culture. University of Chicago Pres, 2017.
Introduction(→この内容の詳細はこちらへどうぞ!)
I. Resistance: War Gods
1. Only After Night Fall
2. Keepers of the Sky
3. Magic Relief
4. Tribal Resolution
5. All Things Will Eat Themselves Up
6. This Far Away
II. Regret: A Scalp from Sand Creek
7. I Have Come to Kill Indians
8. The Bones Bill
9. We Are Going Back Home
10. Indian Trophies
11. AC.35B
12. A Wound of the Soul
III. Reluctance: Killer Whale Flotilla Robe
13. Masterless Things
14. Chief Shakes
15. Johnson v. Chilkat Indian Village
16. Last Stand
17. The Weight Was Heavy
18. Our Culture Is Not Dying
IV. Respect: Calusa Skulls
19. The Hardest Cases
20. Long Since Completely Disappeared
21. Unidentifiable
22. Their Place of Understanding
23. Timeless Limbo
24. Before We Just Gave Up
Conclusion
A Note on the Terms American Indian, Native American, Etc.
Acknowledgments/ Notes/ Index
●クヴァラン族(Kavalan people)
"The Kavalan (endonym "kbaran" [kɨβarán]; "people living in the plain") (Chinese: 噶瑪蘭族) or Kuvalan are an indigenous people of Taiwan, part of the larger Taiwanese aborigine ethnic group. The Kavalan originally inhabited the Kabalan Plain of modern-day Yilan County. Most of them moved to the coastal area of Hualien County and Taitung County in the 19th century. Their language is also known as Kavalan. Currently, the largest settlement of Kavalan is Xinshe (Kavalan: pateRongan) Village in Fengbin Township, Hualien County." - #Wiki.
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リンク(関係者)
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リンク
文献
その他の情報
クレジット:「世界の先住民について知る(リテラシーG)2019:Literacy G: World of
Indigenous Pooples, 2019」
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Copyleft, CC, Mitzub'ixi Quq Chi'j, 1996-2099