はじめによんでください

人間と動物の関係性に関する文化人類学的考察

Anthropological Reconsideration on Animal-Human relations

池田光穂

つねづね私は文学を、認識のための探究というように考えつけているものですから、実存の領域を動きまわるためには、それを人類学や、民族学神話学にまで拡大して考える必要があるのです——イタロ・カルヴィーノ『アメリカ講義』岩波文庫61ページ

    1. 人 間と動物の関係性に関する 文化人類学的考察/2012〜2016年度科研(基盤A・海外学術)「動物殺しの比較民族誌研究」(研究代表者:奥野克巳)に関わる研究調査的関与に関す るウェブページ
    2. 日本学術振興会科学研究費補助金、挑戦 的萌芽研究(研究課題番号: 26560137):研究代表者:池田光穂:2014年度〜2016年度(予定):「動物学者と動物の科学民族誌:人類学者の参 与観察と協働可能性」


1. 研 究計画(1)

(背景の説明)

これまでの5年間の奥野科研では、マヤ先住民の動物の扱い方(供犠と食用と皮革などの資源利用)とコスモロジー(象徴論における動物の位置、メタモル フォーゼの関係)につよい相関関係はないことが明らかになった。これは人類動物学(anthrozoology)のHerzog ら[2009, 2010]が指摘した現代アメリカの菜食主義イデオロギーとアニマルライツとの関連や、菜食主義から肉食容認への容易な「改宗」と類似の現象なのか、それ ともマヤ先住民の生態環境や生活様式におけるスペイン期から独立期以降現在までのライフスタイルの「西洋化」の影響によるものなのかは明らかにできなかっ た。

そのために、本研究では、奥野科研期間中も継続調査していた日本の実験動物の扱いに関する研究や、奥野科研研究中に(研究成果の中間報告会で知った)ア イヌの熊送りに関する豊富な民族誌知見を、現在継続中のマヤとの比較のために。今後も活用しつつ、新たな「人間と動物の関係性」の探究とその研究 の必要性 に至った。

また本研究中に奥野科研のメンバーが多く関わる「『自然と社会』研究会」に参加し、研究討論に参加するうちに、1990年代からはじめる自然/社会、自 然/文化の二分法概念を、新たな民族誌領域を開拓することで克服する動きを知るに至った。しかし、そのような革新的取り組みをする彼ら自身の民族誌的アプ ローチは(限られた例外を除いて)現在もなお民族誌的調査法概念が自然主義のままで、この二分法の枠組みから(ラトゥールらのような指摘があってもなお) 未だ脱却できていないように思われる。ラトールらのリアセンブリング戦術[2005]や立法場面の民族誌[2010]などの吟味し、この調査の民族誌的分 析の想像力に転化させることが、この殺生研究科研においても必要となる点であると思われる。この試みを、私は先住民社会や伝統的な生業に従事する人たちを 対象にして(ネイティブ研究者を含む)現地研究者との交流も含めて、具体的に明らかにしたい。

(本申請に関する研究計画)

全研究期間を通して明らかにしたいテーマのひとつのは、先住民とその帰属国家[制度]における動物の取り扱いに関する比較研究である。調査が試みられる フィールドは、世界の先住民とその帰属国家多数民(ドミナントなエスニシティとメスティソ[混血]からなる国家「主体」ないしは「国民」)がせめぎ合う場 所や空間(ethno-scape)である。また、ここで対象になるのは動物とは、儀礼に供する供犠動物(野生動物を含む)と実験動物と人間の関係であ る。扱う資料や調査法は、歴史資料・インタビュー・ならびに参与観察である。

この研究を通した最終的な目論見は、動物の殺傷に関するその象徴論や宇宙論(コスモロジー)に関する文化人類学的説明に関する主たる言説を構成する、伝 統的/近代的、生態環境決定論/文化決定論、伝統的未開的思惟/近代合理的思考、という二元論的秩序の再吟味と脱構築にあり、この研究のフィールドの過去 から現在に至る文化資料の再検討を通して明らかにしたい。

2. 研 究計画(2)(→出典:「動物学者と動物の科学民族誌」)

本 研究の目的は、日本の大学や研究機関に属する哺乳 類動物学者に関する科学人類学的な調査をおこない民族誌を作成する研究である。その研究は、(a)動物の行動を観察する(b)動物学者を観察する(c)人 類学者による布置から構成される3者関係から協働して三角測量(triangulation)する。人間動物学(anthrozoology)という本邦 初のものを目論見る。人間と動物の関係に関する研究の多くは動物ケアという観点からが多く、本研究のこの目的は独自である。三角測量的な参与観察調査を通 して、この新しい学問分野に相応しい現場調査における情動=行動=認識に関する記述法(ethnos-graphy)の創案を目指す。またこの過程を記録 することによりこの記述法についての考察が可能になる。人間と動物の関係についての未来への提案が可能となる。

研 究の目的は、日本の大学および行政ないしは研究 機関に属する哺乳類動物学者に関する科学人類学的な調査をおこない民族誌(ethnography)を作成する研究である。端的には「哺乳類動物研究者の 研究」であるが、その研究は、(a)動物の行動を観察する(b)動物学者を観察する(c)人類学者による布置から構成される3者関係から三角測量 (triangulation)するものである。研究ジャンルとしては、広義の人間動物学(anthrozoology)(Herzog 2011)すなわち「人間と動物のあいだの関係についての研究(the study of the relationships between humans and animals)」と定義され、簡潔にまとめると人間と動物の研究(human-animal studies, HAS)という研究領域に属するものである。エソロジー研究までを守備範囲にいれたこの研究を情動=行動=認識に関する記述法(ethnos- graphy)と呼び、人類学の民族誌を補完すべき方法論の開発を目論見る。

ドードーのレントゲン写真??

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文 献

著 者プロフィール

大 阪豊中キャンパス図書館猫「クロチャン(斉藤さんとは言わせない会)」と板橋の群鹿・江戸図屏風(国立 歴史民俗博物館所蔵)


古 代エジプトのカバ:大英博物館蔵

Una parte de mural La obra de Diego  Rivera, ca.  1931

池 田光穂(いけだ・みつほ)1956年大阪生まれ (猫年ではなく干支は申年)大阪大学コミュニケーションデザイン・センター教授(臨床部門)。専門は中米民族誌学、医療人類学、臨床コミュニケーション教 育など。(写真は、筆者ではなくて、職場の近くに棲息する黒猫で、その場所がら「図書館猫クロちゃん」と呼んでいるネコです。ジェンダーは雌=女性