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スマートメディアユーザーのナルシズム化と新しい孤独の誕生

Narcissism-ization and emaerging new solitude among the Digital Natives: An Ethnographic Studies:科学研究費補助金 研究(基金, 20K01216)

illustration cited from Roberto Gonzales,"Connected: how a Mexican village built its own cell phone network," 2020

池田光穂

★最終年度における全体の研究概要

デジタル・ネイティブである若者がスマートフォンを 利用するなかで、(1)現実と仮想のソーシャル・ネットワークの動態の現状について調べ、(2)仮想コミュニケーションの増大ははたしてユーザーのナルシ シズム化と「新しい孤独」を生んでいるのかという疑問について答えるために、民族誌などの手法を使って、普遍的共通性と文化的多様性の特性を調査分析し た。その結果、SNS依存とよばれる現代人においても情報の相互交換という意味でのリアルなコミュニケーションの総量もまた増加しているという主体的感覚 が、結果的にユーザーのナルシシズム化と孤独・孤立感に歯止めをかけていることが明らかになった。

In order to (1) examine the current dynamics of real and virtual social networks among young digital natives using smartphones, and (2) answer the question of whether the growth of virtual communication has led to narcissism and a "new type of loneliness" among users, we used ethnographic and other methods to investigate the characteristics of universal commonalities and cultural diversities. The results revealed that the subjective sense that the total amount of real communication in terms of mutual exchange of information is also increasing, even among people today who are dependent on social networking services, is ultimately putting a stop to tend to the narcissism and sense of loneliness and/or isolation of users.

●研究の概要(2022年改訂)——基盤研究(C) 20K01216.

この研究はデジタル・ネイティブである若者がスマー トフォンを利用するなかで、(1)現実と仮想のソーシャル・ネットワークの動態の現状について調べ、そして旧世代から危惧されている、(2)ヴァー チャル・コミュニケーションの増大ははたしてユーザーのナルシズム化(ナルシシズム化)と「新しい孤独」を生んでいるのかという疑問について答えるため に、(リアルとヴァー チャルの両方の)エスノグラフィーの手法を使って、世界のいくつかの地域の共通性と多様性の特性を明らかにすることにある。だが近年の新型コロナウイルス の蔓延と大学関係者に対する移動行動の制限の指示のためにリアルのフィールドワークの実施の中止を余儀なくされた。そのため池田光穂は医療人類学、井上大 介は宗教人類学、徐淑子は保健 行動科学、山崎スコウはロボット知識科学の観点から、スマートフォンユーザーに関する先行研究を収集し、情報を集約することに努めた。遠隔会議アプリを利 用して科研連絡会議をもち、12月に大阪大学内で研究発表の機会をもった。AIと宗教に関する研究会に参加し日本の大学生や海外の宗教団体における信者の 変容などについて調査をおこない、若者の心理的動向との比較を試みた。またスマホ依存という観点から保健医療分野における孤独および孤立と健康や、アディ クション(心理的身体的依存)がスマホユーザーにも起こり得るのかを検証する方法論について文献調査を継続しておこなっている。また認知症の人を対象とし たロボットメディア、AI開発の状況、そして利活用の影響や効果の文献検討を行うとともに、孤独へのアプローチとして臨床現場から対話データを収集し、実 際に機械学習のアルゴリズムを用いて認知症の人の心理、行動に介入する新たな技術的可能性について検討した。

This study examines (1) the current dynamics of real and virtual social networks as young digital natives use smartphones and (2) whether the growth of virtual communication, as concerned by previous generations, has led to the narcissism of users. To answer the question of whether narcissism and "new type of loneliness (or neo-loneliness)" are being generated, we will use ethnographic methods (both real and virtual) to characterize the commonalities and diversities of several regions of the world. However, the recent spread of the new coronavirus and the directive to university personnel to restrict their travel activities have forced the cancellation of the implementation of real fieldwork. Therefore, we sought to collect and consolidate information from previous studies on smartphone users from the perspectives of medical anthropology (by M.Ikeda), anthropology of religion (by D.Inoue), health behavioral science (by S. Suh), and from robot knowledge science (by R.Yamazaki-Sukov). We participated in a research group on Artificial Intelligence (AI) and religion, and conducted a survey on the transformation of Japanese university students and believers in foreign religious groups, and compared the results with the psychological trends of young people. In addition, We are continuing to conduct a literature review on both classical type and new type of loneliness, isolation, and health in the healthcare field from the perspective of "smartphone dependence," and on methodologies to examine whether addiction (psychological and physical dependence) can also occur among smartphone users. We are also conducting a literature review on the status of robotic media and AI development targeting people with dementia, as well as the impact and effectiveness of their use.

◎進捗状況の自己評価(2021年4月):2020年度の報告→おおむね 順調

近年の新型コロナウイルスの蔓延と大学関係者に対す る移動行動の制限の指示のためにリアルのフィールドワークの実施の中止を余儀なくされた。そのため池田光穂は医療人類学、井上大介は宗教人類学、徐淑子は 保健行動科学、山崎スコウ竜二はロ ボット知識科学の観点から、スマートフォンユーザーに関する先行研究を収集し、情報を集約することに努めた。すなわち、AIと宗教に関する研究会に参加し 日本の大学生や海外の宗教団体における信者の変容などについて調査をおこない、若者の心理的動向との比較を試みた。またスマホ依存という観点から保健医療 分野における孤独および孤立と健康や、アディクション(心理的身体的依存)がスマホユーザーにも起こり得るのかを検証する方法論について文献調査を継続し ておこなっている。また認知症の人を対象としたロボットメディア、AI開発の状況、そして利活用の影響や効果の文献検討を行うとともに、孤独へのアプロー チとして臨床現場から対話データを収集し、実際に機械学習のアルゴリズムを用いて認知症の人の心理、行動に介入する新たな技術的可能性について検討した。 だが、これらの研究は、個別の情報のマイニングの域を出ず、新型コロナウイルスの蔓延と大学関係者に対する移動行動の制限が、それを相対的に研究する我々 にも研究のための「ネット情報依存」状況を引き起こしている自覚をもたらしている。

●研究計画

【令和2(2020)年度】 【令和3(2021)年度】 【令和3(2021)年度】総括と【令和 4(2022)年度】の計画ならびに総括
【当初計画】
代表者池田の所属する大 阪大学で本研究の研究倫理申請を行う。
5月ー10月:研究代表者の池田は医療人類学、分担者・井上は宗教人類学、分担者・徐は保健行動科学、分担者・山崎 スコウはロボット知識科学の観点から、スマートフォンユーザーに関する先行研究を収集し、情報を集約する。
10月ー3月:ヴァーチャル・フィールドワーク に関する必要機材やネットワーク会議のためのユーザー契約をおこない、研究班における連絡体制や資料の共有システムを構築する。
10月ー12月:先行研究 における調査時期、ネットワーク環境、通信情報の法規制、社会階層格差など世界の国別・地域別・文化民族別などの要因変数を析出し「質的研究マトリクス」 ルーブリックを作成する。用語集(Glossary)を作成。
《経費:関連文献の購入、研究打合会議、資料収集、ウェブ作成費等》
【当初計画】
4月ー7月:引き続き 「質的研究マトリクス」ルーブリックの作成を継続すると同時に、それに基づく調査項目を析出しリアル・ヴァーチャルの調査計画を立案する。
8月ー9月:ス マートフォン、スマートメディアのユーザーのナルシズム化と「新しい孤独」に関するリアルならびにヴァーチャルなエスノグラフィー調査を実行する。予定さ れている地域と担当者は以下のもの:米国ならびにヨーロッパ(デンマーク)の通信先進国(山崎スコウと池田);タイや韓国を含むアジア(徐と池田):メキ シコやキューバの中米・カリブ地域(井上と池田)。
10月ー3月:調査終了後、収集したデータを共有しつつ、以下の4つの対象と分析[カギ括弧内]をおこ なう。(1)利用者[内容分析]、(2)文化比較[多文化間比較手法]、(3)流通情報[言説分析]、(4)ナルシズム化と孤独感の様態[伏線経路 (trajectory pass)分析]。同時期に最終年度にむけて論文(報告書)の着手を開始する。
12月ー1月:この研究に理解のあるメキシコ国立自治大学、ソウル大学、デ ンマーク・オーフス大学等の関連研究者を交えたネットワーク会議を開催する。
《経費:海外旅費、国内旅費、研究打合会議》
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2021年研究班:
YS)AIと認知症ならびに人型ロボットに対する人間の認知機能と自我形成に関する評価研究について、を中心に。
DI)世界の宗教界は若者のスマートメディアの利用にどのようにアプローチしているのかの総論的サーヴェイを、中心に。
SS)薬物利用者とスマートメディア、さらにはハームリダクションとその心理的影響の総論的サーヴェイを、中心に。

【当 初計画】
4月ー8月:初年度と2年度の研究成果をとりまとめる。
8月ー9月:国内外の学会・研究会・セミナーで発表する。
10ー3月:作成した発表論文を元にプルーフリーディングを受けて海外の雑誌に投稿する。
《経費:海外・国内旅費、論文校閲費》

2022年研究班:
MI)研究の総括、大学キャンパスにおけるスマートメディアの利用における受講態度の変容に関する研究
YS)人型ロボット利用とユーザーの心的過程の研究
DI)世界の若者における信仰とスマートメディアに利用実態に関する研究
SS)若者薬物利用者のスマートメディア利用実態に関する研究
【2021年度総括】
研究代表者の池田はナルシズム(ナルシシズム)化と「新しい孤独」に関する心理学ならびに精神分析からの理論について情報収集をおこなった。分担者の井上 らと共同で開始したシンギュラリティと宗教の思想的関係に関する議論を、本研究課題にどのように接続するのかについて検討をした。井上は、現代社会におけ るスマートメディア拡散前後のナルシズムの変容について、大学生あるいは宗教実践者を対象に実証的に調査する方向性を確認した。とりわけ欧米におけるイン ターネットやデジタル化と宗教の関係性についての文献を収集分析した。分担者の徐は、孤独は重要な健康問題であるとして、孤独対策担当大臣を設置した英国 の動向等について調査を行った。公的なヘルスケアシステムの中に「社会的処方」を取り入れる取組についてまとめた短報を公表した。分担者の山崎=スコウ は、深刻化する社会的孤立に対するアプローチとして対話ロボットの独居高齢者宅での適用を図り、効果や多様な影響を評価するため数ヵ月から1年以上に及ぶ 長期実験を実施し、追跡調査を行った。軽度認知障害(MCI)の高齢者を中心に、認知症高齢者、健常高齢者を対象に対話データを収集するとともに、高齢者 のロボットとの日常的、継続的対話における適応過程で精神的安定や生活習慣の変容、家族関係の変容など多様な影響や効果が見出された。スマートフォン利用 おけるリモート環境情報を「コミュニケーションの切断」と理解して、COVID-19流行状況における大学の遠隔授業化を、もうひとつの「新しい孤独」を 作り出す状況だと解釈して、全員の共同研究の成果となる「機械の「心」と対話は可能か?:大学教育のなかでの審問」を発表した。

【現在までの進捗状況】
昨年度は新型コロナウイルスの蔓延と大学関係者に対する移動行動の制限の指示のためにリアルのフィールドワークの実施の中止を余儀なくされた。そのため医 療人類学、宗教人類学、保健行動科学、山崎スコウはロボット知識科学の観点から、スマートフォンユーザーに関する先行研究を収集と、COVID-19流行 下における学生たちの孤独と、それを補うスマートメディアの機能のポジティブ面とネガティブ面から検討するという戦術転換により、研究状況は好転した。折 からデジタル宗教の論集の改訂版が出たり、保険医療活動における感染の危険のないロボットを使ったコミュニケーション状況の改善の試みや、ヘルスケアシス テムにおけるスマートフォンをつかった社会的処方の促進という、比較文化現象を素材に、本研究の鍵概念であるスマートメディア導入による若者のナルシズム (ナルシシズム)化と、新しい孤独の様態に関する多様な広がりを確認しつつある。

【今後の研究の推進方策】
新型コロナウイルスの蔓延と大学関係者に対する移動行動の制限の指示による、大学キャンパスおける研究と教育の遠隔デジタルネットワーク化は、本研究課題 がもつ、スマートメディア導入による若者のナルシズム(ナルシシズム)化と、新しい孤独の様態に関する多様な広がりを確認しつつある。そのため、最終年度 である2022年度には、スマートメディアユーザーのナルシズム(ナルシシズム)化と、新しい孤独の様態が、(1)大学教育の現場、(2)宗教的活動の現 場、(3)保健医療とりわけ公衆衛生やヘルスコミュニケーションの現場、および(4)人工知能(AI)やロボットを使った現場、という4つの象限のなかで どのような展開をしているのかについて、とりまとめる方針である。


池 田:令和2(2020)年度に計画予定であった、先行研究 における調査時期、ネットワーク環境、通信情報の法規制、社会階層格差など世界の国別・地域別・文化民族別などの要因変数を 析出し「質的研究マトリクス」 ルーブリックを作成することに着手した。研究の遅れを取り戻す。海外リアルのフィールドワークを断念し、感染予防に注意しながら、国内の現地調査(主にイ ンタビューを中心とした質的研究)をおこなった。また、それと並行して必要な調査項目を析出しヴァーチャルの調査計画を立案した。年度後半に(1)利用者[内容分析]、(2)文化比較[多 文化間比較手法]、(3)流通情報[言説分析]、(4)ナルシズム化と孤独感の様態[伏線経路 (trajectory pass)分析]。同時期に最終年度にむけて論文(報告書)の構想を開始した。
池 田:ひきつづき、「ナ ルシズム化」(ナルシシズム化)と「新しい孤独」に関する心理学ならびに精神分析からの理論について情報収集をおこなった。前年度より井上と共同で開始し たシンギュラリティと宗教の思想的関係に関する議論を、本研究にどのように接続するのかについて、井上と議論を重ねた。また、スマートフォン利用おけるリ モート環境情報を「コミュニケーションの切断」と理解して、COVID-19流行状況における大学の遠隔授業化を、もうひとつの「新しい孤独」を作り出す 状況だと解釈して、共同発表「機械の「心」と対話 は可能か?:大学教育のなかでの審問」を研究発表した。 池田: 最終年度は、本研究が対象としているZ世代あるいはiGen世代に焦点をあげ、それ以前の親の世代とりわけX世代([1955-]正確には1965- 1980年生まれ)が、スマートメディアを利用しながら、どのように危惧しているのかを対比的に考察することとした。両世代の比較をするための参照項目と しては、コンピュータ・インターネット・スマートメディアの利用状況、それらの端末に対するイメージや評価の違い、ナルシシズム感覚の世代間ギャップ、 ネットハラスメントに対する態度や理解、さらには、電脳化にともなう社会の変貌の予測などの違いを明らかにすることで、どのような「適切なアドバイス」 が、スマートメディアと人類社会の「共存」のために有効になるのか、について考察した。

・Mitsuho IKEDA, La sombra de Mikhail Bakhtin en la narrativa de nuestra enfermedad. XV Congreso National y VI Internacional asociación de estudios japoneses en España. Conferencia invitada, Universidad de Salamanca. 27 de octubre, 2020.
井 上:科研「スマホ=ナルシズム」を前提に、科研代表者・池田光穂との 研究会議(対面3回・ZOOM3回)に参加し、研究状況や研究計画について情報を共有し、日本の大学生や海外の宗教団体における信者の変容などについて案 をまとめたとともに関連文献の収集、整理に従事した。
井 上: 大阪大学への出張や横浜での打合せ、数度のzoom会議によって、本科研代表である池田光穂氏と研究テーマや方法論、研究対象について何度も議論を交わ し、研究の方向性を調整した。より具体的には、ナルシズムの概念や定義について、心理学的先行研究を共有したとともに、現代社会におけるスマートメディア 拡散前後のナルシズムの変容について、大学生あるいは宗教実践者を対象に実証的に調査する方向性を確認した。また宗教とインターネットに関する文献蒐集を 日本語のみならず英語の文献についても幅広く行った。そのうちHeide A. Campbellらが執筆したDigital Religion;Understanding religious Practice in New Media Worldsという書籍の内容を確認し、欧米におけるインターネットやデジタル化と宗教の関係性について網羅的に整理することができた。また自身の課題で ある宗教とインターネットというテーマにそって、キューバのアフリカ系宗教の変容が、スマートフォンによってどのように変容しつつあるのか、という論文の 執筆準備に従事した。2022年度は論文を完成させる予定である。

井上: キューバのアフリカ系宗教の指導者におけるスマートメディアの使用が、同宗教文化にどのような変容をもたらしているのかという点について考察し、以下の論 文、学会発表で発信した。また株式会社アイブリッジへのオンライン調査の委託を通じ、首都圏の大学生を対象としたスマートメディアの利用状況と自己愛の関 係性について量的調査を実施した。調査結果については来年3月の創価大学『人間学論集』への投稿で発表を予定している。

論文(査読無)
「キューバにおけるデジタル宗教の実践と孤独化の諸相―スマートメディアとインターネットによって変容するサンテリーア信仰を題材として」『ソシオロジカ』 第 47 巻 第 1・2 号, 2023:35⁻56。

国内会議(査読無)
「デジタル宗教の諸相-キューバにおけるヨルバ系宗教を題材に」日本宗教学会第81回学術大会(2022年9月10日)。

: 学術データベースを用いて保健医療分野における孤独および孤立と健 康、スマートメディアについての研究動向および実践の状況を調査した。アディクション、ついで、ソーシャルキャピタルとの関係において検討する報告が増加 していた
: 前年度にひきつづき医療・健康分野における関連文献の収集を行った。孤独は重要な健康問題であるとして、孤独対策担当大臣を設置した英国の動向等について 調査を行った。公的なヘルスケアシステムの中に「社会的処方」(social prescribing,医療機関が治療活動のひとつの選択肢として、地域の親睦クラブや自助グループなどへの参加を患者に勧奨すること)を取り入れる取 組についてまとめた短報を公表した。
:2021 年度研究会議での討議を受け、収集した文献の検討をひきつづき行った。公衆衛生・医療分野において、「孤独」「自己愛」「メディア使用」は病理として治療 や対策の対象という位置づけで語られること、「孤独「対策」としてフォーマルな制度・政策に落とし込む方向性(例:孤独省の設立)に着目した。以上にもと づく論文を準備する他、SNS上の情報を研究データとして利用することについて、学会発表を行った。

徐淑子.(2022, 6) .当事者発信のウェブ・リソースを活⽤した卒論指導の試案策定.第36回⽇本保健医療⾏動科学会学術⼤会, オンライン,日本.
山 崎=スコウ:メディアユーザー研究の最新動向に関して情報収集を進 め、認知症の人を対象としたロボットメディア、AI開発の状況、そして利活用の影響や効果の文献検討を行うとともに、孤独へのアプローチとして臨床現場か ら対話データを収集し、実際に機械学習のアルゴリズムを用いて認知症の人の心理、行動に介入する新たな技術的可能性について検討した。
山 崎=スコウ:近 年深刻化する社会的孤立に対するアプローチとして対話ロボットの独居高齢者宅での適用を図り、効果や多様な影響を評価するため数ヵ月から1年以上に及ぶ長 期実験を実施し、追跡調査を行った。軽度認知障害(MCI)の高齢者を中心に、認知症高齢者、健常高齢者を対象に対話データを収集するとともに、高齢者の ロボットとの日常的、継続的対話における適応過程で精神的安定や生活習慣の変容、家族関係の変容など多様な影響や効果が見出された。イスラエルの人類学者 を招へいした交流にも発展し、多様な文化圏における孤立やAI、ロボットとのコミュニケーションにおける相互関係や人の自己認識に関する国際的議論を深め るネットワークを築くことができた。その他にも、病院の現場でナースや医師を対象に手指衛生遵守を促すロボットの活用について試行を始め、各職域の専門家 によるロボットへの認識と効果に関する検討を進め、ロボットに対する認識の違いや、ロボットを含むチームワークなど新たな検討課題を見出している。また、 若年者のロボットに対する認識を調査するため、学生を対象に実験を実施し、ロボットが保持する記憶、また複製可能なロボットの同一性に関して、人が持つ印 象や思考の評価実験を北欧はデンマークとの比較実験として実施し、データに基づいて今後議論を深める土台を築く成果を得ることができた。
山崎=スコウ: 高齢者の社会的孤立への対話的アプローチとして対話ロボットを活用し、独居者宅等での長期適用実験を実施した。追跡調査を通してロボットへの愛着形成や最 も親しい人と同等の自己開示への意欲などを明らかにするとともに、撤去に伴う倫理的課題について検討した内容を出版した。人工物との関係性が顔見知り程度 の人との関わりを希薄化させ、新たな孤独を生む可能性があるのか、その内実など今後さらに検討を要する課題が得られた。

論文(査読有)
-    Ryuji Yamazaki, Shuichi Nishio, Yuma Nagata, Yuto Satake, Maki Suzuki, Hideki Kanemoto, Miyae Yamakawa, David Figueroa, Hiroshi Ishiguro, and Manabu Ikeda, “Long-term effect of the absence of a companion robot on older adults: A preliminary pilot study,” Frontiers in Computer Science, 5:1129506, 2023.
https://doi.org/10.3389/fcomp.2023.1129506
国内会議(査読無)
-    山崎竜二, ロボットケアに関する倫理学的考察:MCI患者への長期的影響, 日本認知症ケア学会大会, 日本認知症ケア学会誌, 21(1), p.93, 2022.(2022年10月 日本認知症ケア学会令和4年度石崎賞受賞)

様 式 C-19、F-19-1、Z-19(共通)

1.研究開始当初の背景

(1) 研究開始当初(申請書作成時の2019年中頃)は、デジタル・ネイティブである若者がスマートフォンを利用するなかで、現実と仮想のソーシャル・ネット ワークの動態の現状について調べ、そして旧世代から危惧されているような、仮想コミュニケーションの増大ははたしてユーザーのナルシシズム化と「新しい孤 独」を生んでいるのかという疑問について答えるために、(現実と仮想の両方の)民族誌の手法を使って、世界のいくつかの地域の共通性と多様性の特性を明ら かにすることにあった。

(2) このような動機を持つにいたった理由は、洋の東西を問わず、Z世代やi世代と呼ばれる若者たちの世代のスマホとSNS依存に対してその親の世代、教育関係 者、ならびに行政当局は、さまざまな情報によると、若者たちに対してそのナルシシズム化傾向や、ネットいじめによる自殺などの原因になる「新しい孤独」現 象が生じているという危惧を抱いていることがわかった。このことをふまえ、調査を実施することにより、若者の間に流布している「ナルシシズム(申請当初は 「ナルシズム化」と表記、以下ナルシシズム)」や「孤独」の意味とICT時代のコミュニケーションに新たな知見をもたらし、かつ危惧を抱いている旧世代の 人々に若い世代との円滑なコミュニケーションの機会を提供することの一助になる[のではないのか?]というのが研究班の当初の目論見であった。


2.研究の目的

研究開始から新型コロナウイルスの流行により調査範囲を海外より国内の状況に向けることで、研究代表者と研究分担者の研究の目的を細分化することで、各人の調査研究を支障なく遂行できるようにすることとした。

(1) 研究代表者の池田の目的は、ナルシシズム化と「新しい孤独」に関する心理学ならびに精神分析からの理論についての情報収集とその分析とした。ナルシシズム化と「新しい孤独」に独自の定義を与えるためである。

(2) 研究分担者の井上は、現代社会におけるスマートメディア拡散前後のナルシシズムの変容について、大学生を調査対象として明らかにすることを目的とした。ま た井上が研究対象としているアフロキューバン宗教における、インターネットやデジタル化と不況の関係性についての研究をおこなうこととした。

(3) 研究分担者の徐は、孤独は重要な健康問題であるとして、孤独対策担当大臣を設置した英国の動向等について調査を行うこととした。公的なヘルスケアシステムの中に「社会的処方」を取り入れる取組について分析するためである。

(4) 研究分担者の山崎=スコウは、深刻化する社会的孤立に対するアプローチとして対話ロボットの独居高齢者宅での適用を図り、効果や多様な影響を評価するため 調査を行うこととした。軽度認知障害(MCI)の高齢者を中心に、認知症高齢者、健常高齢者を対象に対話データを収集するとともに、高齢者のロボットとの 日常的、継続的対話における適応過程で精神的安定や生活習慣の変容、家族関係の変容など多様な影響や効果について明らかにするためである。

(5) 全体での調査班の研究目的は、スマートフォン利用おけるリモート環境情報を「コミュニケーションの切断」と理解して、COVID-19の流行状況における 大学の遠隔授業化を、(1)で定義する「新しい孤独」を作り出す状況だと解釈して、研究代表者と研究分担者を遠隔会議を開催して議論することとした。

3.研究の方法

上掲の研究目的に対応する、最も適切だと思われる方法論を研究代表者や研究分担者が採用し、その研究予算を使って、研究の遂行を円滑におこなうこととした。

(1) ナルシシズム化と「新しい孤独」に関する心理学ならびに精神分析からの理論についての情報収集とその分析を可能にするためには、インターネットによる情報 収集、各種文献調査などが中心となる。これらの理論分析における必要な情報を提供した分野には、哲学、心理学、精神分析学、社会学、文化人類学、認知行動 学などの分析枠組みにもとづいた調査をおこなう。

(2) 現代社会におけるスマートメディア拡散前後のナルシシズムの変容について、大学生を調査対象として明らかにするために、インターネットを利用した情報調査 会社を利用する。本研究では、研究課題採択時に研究代表者が所属する大阪大学COデザインセンターにおいて研究倫理申請をおこない、全研究期間における承 認を得ている。アフロキューバン宗教における、インターネットやデジタル化と不況の関係性については、フィールドワークならびに民族誌の手法を用いた分析 を試みる。

(3) 孤独は重要な健康問題であるとして、孤独対策担当大臣を設置した英国の動向等について調査を行うためには、インターネットをつかった情報収集という手法を 使った。また、コロナ禍における公的なヘルスケアシステムの中にインターネットを使った「社会的処方」を取り入れる取組について分析するために、デジタル エスノグラフィーという方法の流用の可能性についても検討した。

(4) 対話ロボットの独居高齢者宅での適用事例や、軽度認知障害(MCI)の高齢者を中心に、認知症高齢者、健常高齢者を対象に対話データを収集するために、コ ンピュータによるデジタルアーカイブ化の作業をおこなう必要性があった。また、ノートパソコンを使った統計分析などを利用した。

(5) COVID-19流行状況における大学の遠隔授業化の検討については、研究代表者の池田、ならびに研究分担者の井上および徐が直接その渦中におかれたの で、インターネットによる情報収集をするほかに、遠隔授業の合間に、学生たちが感じる「孤独」感や、文部科学省を含む大学管理当局の「学生への配慮」とい う学内措置ついて、各大学の職場において情報を収集し、遠隔会議において、それらの質的情報を使った言説分析などをして、意見交換をおこなった。
4.研究成果

研究成果として、大阪大学で毎年冬におこなわれた学内研究会である豊中地区研究交流会に全員が対面のポスターならびに遠隔で参加し、研究の経過報告を共同 でおこなった。また、大阪大学COデザインセンター招へい准教授(当時)の黒田聡にも研究協力者として研究交流会に加わってもらい、学術上の意見交換をお こなった。

(1) 研究代表者の池田、先行研究における調査時期、ネットワーク環境、通信情報の法規制、社会階層格差など世界の国別・地域別・文化民族別などの要因変数を析 出し「質的研究マトリクス」ルーブリックを作成することに着手した。海外での現実フィールドワークを断念し、感染予防に注意しながら、国内の現地調査(主 にインタビューを中心とした質的研究)をおこなった。その理論分析のための整理として、(a)利用者[内容分析]、(b)文化比較[多文化間比較手法]、 (c)流通情報[言説分析]、(d) ナルシシズム化と孤独感の様態[伏線経路 (trajectory pass)分析]において分析することが適切であることが明らかになった。池田はさらに研究分担者の井上らと共同で開始したシンギュラリティと宗教の思想 的関係に関する議論を、本研究課題にどのように接続するのかについて検討をした。

(2) 井上は、日本の大学生や海外の宗教団体における信者の変容などについて案をまとめたとともに関連文献の収集、整理に従事した。より具体的には、ナルシシズ ムの概念や定義について、心理学的先行研究を共有したとともに、現代社会におけるスマートメディア拡散前後のナルシシズムの変容について、大学生あるいは 宗教実践者を対象に実証的に調査する方向性を確認した。また宗教とインターネットに関する文献蒐集を日本語のみならず英語の文献についても幅広く行った。 そのうちHeide A. Campbellらが執筆したDigital Religion;Understanding religious Practice in New Media Worldsという書籍の内容を確認し、欧米におけるインターネットやデジタル化と宗教の関係性について網羅的に整理することができた。また自身の課題で ある宗教とインターネットというテーマにそって、キューバのアフリカ系宗教の変容が、スマートフォンによってどのように変容しつつあるのか、という論文を 執筆した。また、その内容を学会等で発表した。

(3) 研究分担者の徐は、学術データベースを用いて保健医療分野における孤独および孤立と健康、スマートメディアについての研究動向および実践の状況を調査し た。アディクション、ついで、ソーシャルキャピタルとの関係において検討する報告が増加していたことが明らかになった。孤独は重要な健康問題であるとし て、孤独対策担当大臣を設置した英国の動向等について調査を行った。公的なヘルスケアシステムの中に「社会的処方」(social prescribing,医療機関が治療活動のひとつの選択肢として、地域の親睦クラブや自助グループなどへの参加を患者に勧奨すること)を取り入れる取 組についてまとめた短報を公表した。公衆衛生・医療分野において、「孤独」「自己愛」「メディア使用」は病理として治療や対策の対象という位置づけで語ら れること、「孤独「対策」としてフォーマルな制度・政策に落とし込む方向性(例:孤独省の設立)に着目した。以上にもとづく論文を準備する他、SNS上の 情報を研究データとして利用することについて、学会発表を行った。

(4) 山崎=スコウは、メディアユーザー研究の最新動向に関して情報収集を進め、認知症の人を対象としたロボットメディア、AI開発の状況、そして利活用の影響 や効果の文献検討を行うとともに、孤独へのアプローチとして臨床現場から対話データを収集し、実際に機械学習のアルゴリズムを用いて認知症の人の心理、行 動に介入する新たな技術的可能性について検討した。近年深刻化する社会的孤立に対するアプローチとして対話ロボットの独居高齢者宅での適用を図り、効果や 多様な影響を評価するため数ヵ月から1年以上に及ぶ長期実験を実施し、追跡調査を行った。
 軽度認知障害(MCI)の高齢者を中心に、認知症高齢者、健常高齢者を対象に対話データを収集するとともに、高齢者のロボットとの日常的、継続的対話に おける適応過程で精神的安定や生活習慣の変容、家族関係の変容など多様な影響や効果が見出された。イスラエルの人類学者を招へいした交流にも発展し、多様 な文化圏における孤立やAI、ロボットとのコミュニケーションにおける相互関係や人の自己認識に関する国際的議論を深めるネットワークを築くことができ た。
 その他にも、病院の現場で看護師や医師を対象に手指衛生遵守を促すロボットの活用について試行を始め、各職域の専門家によるロボットへの認識と効果に関 する検討を進め、ロボットに対する認識の違いや、ロボットを含むチームワークなど新たな検討課題を見出した。このことについては、池田も研究助言として関 わった。また、若年者のロボットに対する認識を調査するため、学生を対象に実験を実施し、ロボットが保持する記憶、また複製可能なロボットの同一性に関し て、人が持つ印象や思考の評価実験を北欧はデンマークとの比較実験として実施し、データに基づいて今後議論を深める土台を築く成果を得ることができた。さ らに、高齢者の社会的孤立への対話的アプローチとして対話ロボットを活用し、独居者宅等での長期適用実験を実施した。追跡調査を通してロボットへの愛着形 成や最も親しい人と同等の自己開示への意欲などを明らかにするとともに、撤去に伴う倫理的課題について検討した内容を出版した。人工物との関係性が顔見知 り程度の人との関わりを希薄化させ、新たな孤独を生む可能性があるのか、その内実など今後さらに検討を要する課題が得られた。

(5) スマートフォン利用おけるリモート環境情報を「コミュニケーションの切断」と理解して、COVID-19流行状況における大学の遠隔授業化を、もうひとつ の「新しい孤独」を作り出す状況だと解釈して、共同発表「機械の「心」と対話は可能か?:大学教育のなかでの審問」を研究発表した。

(6) 以上の研究調査活動を通して、研究班は次のような見解を持つに至った;
a)スマートメディアを使ったSNS利用など、現代では確実に仮想コミュニケーションの通信量(トラフィック)は増大している。しかしながら、
b)仮想コミュニケーションの通信量の増大は、スマートメディアユーザーにおける現実コミュニケーションの通信量の減少を一義的に意味するものではない。なぜなら、
c)現代人の多くの人たち(本研究が対象にしたのは、遠隔授業を受ける学生、アフロキューバン宗教の職能者、薬物利用者を含む健康や薬に関する情報を、イ ンターネットを使い一人で情報収集する人たち、高齢者一般や認知症施設に入っている当事者たち、専門病院の看護職専門家、一般のロボットユーザーなど) は、現実コミュニケーションを行うと同時に仮想コミュニケーションに参入しているからである。そして、
d)新しい仮想コミュニケーションによる現実生活への介入は現実コミュニケーションにおけるさまざまな軌道修正を受けた「共存」状態を生み出しているものと思われる。このことは、
e)スマートメディア依存は、一義的にユーザーのナルシシズム化を引き起こすよりも、むしろ、
f)ナルシシズム傾向から脱却した別のタイプの自我意識——すなわち「新しい孤独」——がうまれつつあると考えられる。現実コミュニケーションでは共在し ているにもかかわらず遠隔やSNSの集合コミュニティと乖離を感じる、「新しい(タイプの)孤独」がうまれてきたことが明らかにされた。これは現実の身体 よりも仮想の心的アイデンティティが優先されるがゆえの現象である。
g) 「新しい孤独」という現象は、コミュニケーション全体の総量だけでなく、むしろ仮想と現実の相互作用の重要性が主題化されるようになってきた結果である。 「新しい孤独」とは、現実コミュニケーションの実践と同時に仮想のそれが求められるための状況的葛藤の一種なのだ。いずれにせよ、
h) SNSをつかったいじめやハラスメントに対するZ世代・i世代以降の心理的抵抗力(レジリエンス)は彼/彼女らの内的なポテンシャルに依存する可能性があ る一方で、それ以前の世代ではむしろ教育を通した介入によって食い止められていると後者の人たちは理解するという、2つの現象論がみられる。このことの見 極めのためには、さらなる調査研究が必要である。


●研究の概要(日本学術振興会の公開用)

この研究は、デジタル・ネイティブである若者がス マートフォンを利用するなかで、現実と仮想のソーシャル・ネットワークの動態の現状について調べ、そして旧世代から危惧されているような、ヴァーチャル・ コミュニケーションの増大ははたしてユーザーのナルシズム化と「新しい孤独」を生んでいるのかという疑問について答えるために、(リアルとヴァーチャルの 両方の)エスノグラフィーの手法を使って、世界のいくつかの地域の共通性と多様性の特性を明らかにすることにある。このことにより若者の間に流布している 「ナルシズム」や「孤独」の意味とICT時代のコミュニケーションに新たな知見をもたらす。

クレジット:基盤研究(C)「スマートメディアユー ザーのナルシズム化と新しい孤独の誕生:民族誌研究」(令和2(2020)年度〜令和4(2022)年度)課題番号 20K01216

●研究倫理委員会承認 CSCD_IRB_2020-2_200625.pdf in pdf with password(2020年6月25日)

■スマートメディアユーザーのナルシズム化は「新しい孤独」を生みつつあるの か?:先行研究の検討

池田光穂(COデザインセンター)、山崎スコウ竜二 (先導的学際研究機構共生知能システム研究センター)、井上大介(創価大学文学部)、徐淑子(新潟県立看護大学)2020年12月17日発表

里程標としてのシェリー・タークル『つながっている のに孤独: : 人生を豊かにするはずのインターネットの正体』渡会圭子訳、ダイヤモンド社、2018年

"Technology has become the architect of our intimacies. Online, we fall prey to the illusion of companionship, gathering thousands of Twitter and Facebook friends, and confusing tweets and wall posts with authentic communication. But this relentless connection leads to a new solitude. We turn to new technology to fill the void, but as MIT technology and society specialist Sherry Turkle argues, as technology ramps up, our emotional lives ramp down. Even the presence of sociable robots in our lives that pretend to demonstrate empathy makes us feel more isolated, as Turkle explains in a new introduction updating the book to the present day. Alone Together is the result of Turkle's nearly fifteen-year exploration of our lives on the digital terrain. Based on interviews with hundreds of children and adults, it describes new, unsettling relationships between friends, lovers, parents, and children, and new instabilities in how we understand privacy and community, intimacy and solitude." Nielsen BookData. https://ci.nii.ac.jp/ncid/BB27833788

Z世代(Generation Z)1996年頃から2010年初期までの世代

機械の「心」と対話 は可能か?:大学教育のなかでの審問(フルスライド情報サイト
(アブスト)
レイ・カーツワイルの"The Singularity Is Near: When Humans Transcend Biology,"(2005)が公刊されて今年2021年で15周年を迎えた。公刊当時、毀誉褒貶をもって迎えられた同書もその楽観的予測通りにはいか ず歴史的使命を終えたかのように思われる。その一方で私たちの日常生活にインターネット端末は溢れ「それなしに(sine ea et illis)」現代人の生活は考えられず、人工知能は地球上で生活する人たちに不可欠な技術になった。この発表は科学技術と人間の日常生活の関係を「対 話」のメタファーを通して、「違うかたちのSingularity はもうとっくに到来している」さまを大学における教育を通して考える。

キーワード:シンギュラリティ、人工知能、レイ・カーツワイル、科学技術と日常生活、インターネット

This year, 2021, marks the 15th anniversary of the publication of Ray Kurzweil's "The Singularity Is Near: When Humans Transcend Biology," (2005). At the time of its publication, the book was greeted with praise and criticism, but it has not lived up to its optimistic predictions and seems to have completed its historical mission. On the other hand, our daily lives are filled with Internet terminals, and we cannot imagine modern life "sine ea et illis" without it and them, and artificial intelligence has become an indispensable technology for people living on the earth. This presentation will discuss the relationship between science and technology and human daily life through the metaphor of "dialogue" and how "Singularity is already here" through university education. helped by www.DeepL.com/Translator (free version).

Keywords: Singularity, Artificial Intelligence, Ray Kurzweil, Science and Technology and Everyday Life, Internet

デジタル・メディアの理解
こういう発想はどうでしょうか?テキスト の仕上がりのすばらしさは、古い紙のメディアの特性を引き継いでいるからこそpdfは多用される。マ クルーハン的 にいうと、我々はpdfを自由に使っているのではなく、pdfというシステムに自分たちの情報様式が使われていると。僕だったら授業で学生にそのように提 案してから、実際の様態をたしかめてみようと学生に促す。この議論の問題は、俺たちがpdfを使い込んでいるというメディア理解への信念がもたらす傲慢さ だと思います。
スマートメディアユーザーのナルシズム化は「新しい孤独」を生みつつあるのか?
◀︎研究の概要︎︎▶︎この研究は、デジタル・ネイ ティブである若者がス マートフォンを利用するなかで、現実と仮想のソーシャル・ネットワークの動態の現状について調べ、そして旧世代から危惧されているような、ヴァーチャル・ コミュニケーションの増大ははたしてユーザーのナルシズム化と「新しい孤独」を生んでいるのかという疑問について答えるために、(リアルとヴァーチャルの 両方の)エスノグラフィーの手法を使って、世界のいくつかの地域の共通性と多様性の特性を明らかにすることにある。このことにより若者の間に流布している 「ナルシズム」や「孤独」の意味とICT時代のコミュニケーションに新たな知見をもたらす。

◀︎方法▶この発表では先行研究を検討する。里程標 としてのシェリー・タークル『つながっているのに孤独:人生を豊かにするはずのインターネットの正体』渡会圭子訳、ダイヤモンド社、2018年 (Sherry Turkle, Alone together: why we expect more from technology and less from each other. 3rd. ed.,. Basic Books, 2017)の第一二章「真実の告白」を使って、自分の隠されたプライバシーを告白サイトに書き込む人たちの自己アイデンティティの形成やコミュニティ概念 について検討した。

◀︎結果▶告白サイトの書記法の特徴には、(1)匿 名の投稿、(2)秘密と断り書きがある、(3)反応が期待されている、ということがある。その内容は、不適切な性関係や、薬物依存症の告白などからなる。 書き込む人たちは、寄り添い共感したコメントを期待するが、その数は少なく、多くの場合、むしろ道徳起業家のように、相手の立場に立たず説教をする傾向が 強い。このように投稿者には相反する傾向があるのに「ハマる」理由には、「悪くはない」「みんなさびしい、よりどころになる」「胸のつかえを下ろすことに 役立つ」とコメントする。タークルによると「低くなった期待値を共有して」おり、それゆえコミュニケーションロボットやネットの書き込みが、敷居の低い呼 び水になっている。年齢が高い(36歳以上)人は、未だ得られていない友人をネットとして捉え、若い人は告白サイトをめずらしいものとして捉える。書き込 みは韜晦を含めたネガティブな経験であるが、投稿者は告白しても、態度を改めたり、類似の人と積極底なコミュニケーションをとろうはしない。投稿はカタル シスの面があり「落ち込んだ時に告白する。海に流す瓶に入れる手紙と同じ」と表現する。タークルによるとこのような矛盾する書き込み行為は(精神医学でい う)一種の解離だという。自分のことを書き込んだにもかかわらず他人の経験のように客体化されているという。告白サイトには狼が多く潜んでおり、時にエス カーレートして、炎上に油を注ぐ人自身も挙句の果ては攻撃そのものが自己目的化して自失することも珍しくない。

◀︎結果(続き)▶タークルによると、ネットでの (攻撃対象になる可能性のある)プライバシーを書き込むと同時に他者には不満をぶつけるのは、ある種の感情の転移であると分析している。炎上が終わらない のは、物理的な制御要因がないからだというのが、タークルの説明である。告白サイトが、一時的な安心であるにもかからず、その不安の背景にあるものを(書 き込む)ユーザーが理解しているとは言えない。そのように分析して、タークルは告白サイトやSNSはコミュニティか?という疑問を提示する。サイトの多く の投稿者はコミュニティと見ているようだが、タークルはレイ・オルデンバーグのコミュニティの定義である、「とても居心地のよいところ」具体的には、コー ヒーショップ、公園、理髪店など、リアルな空間で、仮想空間にはコミュニティはないと喝破する。その理由は「コミュニティを構成するのは、物理的な近接 性、関心事の共有、現実の結果、責任の共有などだ。そのメンバーはきわめて実際的なやり方で互いに助け合う」(2018:414)機能がないからだ。告白 サイトはカタルシスを通して治療効果があるという主張にタークル教授は強く異論を持つ。投稿してコメントを消費することには、内省的プロセスが欠けている からである。さらに、ネガティブな経験がないコメントするだけのオーディエンスにも、告白サイトを読み続けるには、それに慣れる必要がある。他方で、慣れ ると今度は、それらがおなじみのジャンルのひとつにすぎないと思うようになる。つまり、人々が具体的な個人に向けられる暴力の諸相が平準化され、ジャンル 化され言わば、暴力経験の馴化がおこるからだと、結論している。
●クレジット:基盤研究(C)「スマートメディアユーザーのナルシズム化と新しい孤独の誕生:民族誌研究」 (令和2(2020)年度〜令和4(2022)年度)課題番号 20K01216

●研究倫理委員会承認 CSCD_IRB_2020-2_200625.pdf in pdf with password(2020年6月25日)

タークル『一緒にいてもスマホ(alone together)』という命題の検証
INTRODUCTION: alone together

PART ONE: The Robotic Moment

    * CHAPTER 1: nearest neighbors
    * CHAPTER 2: alive enough
    * CHAPTER 3: true companions
    * CHAPTER 4: enchantment
    * CHAPTER 5: complicities
    * CHAPTER 6: love’s labor lost
    * CHAPTER 7: communion

PART TWO: Networked

    * CHAPTER 8: always on
    * CHAPTER 9: growing up tethered
    * CHAPTER 10: no need to call
    * CHAPTER 11: reduction and betrayal
    * CHAPTER 12: true confessions
    * CHAPTER 13: anxiety
    * CHAPTER 14: the nostalgia of the young

CONCLUSION: necessary conversations

Glossary*用語集

フィルターバブル(filter bubble)
フィルターバブル (filter bubble) とは、「インターネットの検索サイトが提供するアルゴリズムが、各ユーザーが見たくないような情報を遮断する機能」(フィルター)のせいで、まるで「泡」 (バブル)の中に包まれたように、自分が見たい情報しか見えなくなること。」イーライ・パリサー(Eli Pariser, 1980- )の用語。「この語はインターネット活動家であるイーライ・パリサーが2011年に出版した同名の題の著書『The Filter Bubble』(邦訳は『フィルターバブル』のタイトルで2016年)の中で作った。この本によると、ユーザーは次第に自分の考えと対立する観点の情報に 触れることができなくなり、自分自身の情報皮膜の中で知的孤立に陥るという。パリサーによると、フィルターバブルの効果は、人間どうしの対話に対してネガ ティブな影響がある可能性があるというが、影響はほとんどない、あるいは解消可能であるとする主張もある。「エコー・チェンバー」(自分で発した音が、あ らゆる方向から反射して自分の方に返ってくる、音響の実験室。日本語で言うと「残響室」)にいるかのように、あらゆる方向から自分と同じ意見が返ってくる ような閉じた空間にいた結果、様々な人の意見を聞いて様々な考え方を知ることが出来るのではなく、単に自分の意見が増幅・強化されるだけとなる「エコー チェンバー現象」などとも関係が深い用語である」フィルターバブル

"A filter bubble is a term coined by the Internet activist Eli Pariser to refer to a state of intellectual isolation[1] that can result from personalized searches when a website algorithm selectively guesses what information a user would like to see based on information about the user, such as location, past click-behavior and search history.[2][3][4] As a result, users become separated from information that disagrees with their viewpoints, effectively isolating them in their own cultural or ideological bubbles.[5] "- filter bubble.
ネットジェネレーションの特徴
"Generation Z (also known as Post-Millennials, Plurals, or the Homeland Generation in the United States) is the demographic cohort after the Millennials. There are no precise dates for when the Gen Z cohort starts or ends; demographers and researchers typically use starting birth years that range from the mid-1990s to early 2000s, and as of yet there is little consensus about ending birth years" - Generation Z, by Wikipedia

ナルシズム、ナルシシズムの用語法に関す る注解
科学研究費補助金の申請名は「スマートメ ディアユーザーのナルシズム化と新しい孤独の誕生:民族誌的研究」でナルシズム(narcism)という用語が使われています。他方で、ナルシシ ズム(narcissism)
アレクサンダー・ローウェン(Lowen, Alexander) 『ナルシシズムという病い』の書籍紹介
「競争社会のなかで成功を収めてきたの は、身体の硬直した人間、感情を失ったナルシシスト達ではないのか?「あまりに多く、あまりに速く」を追求し続ける我々の時代の狂気を鋭く抉る問題作。」 BOOK Databaseより)章立て:第1章 ナルシシズムのスペクトル/ 第2章 イメージの役割/ 第3章 感情の否定/ 第4章 権力とコントロール/ 第5章 誘惑と操縦/ 第6章 戦慄—非現実の顔/ 第7章 狂気への恐れ/ 第8章 あまりに多く、あまりに速く/ 第9章 われわれの時代の狂気.

※アレクサンダー・ローウェン 1991. 『ナルシシズムという病い : 文化・心理・身体の病理』森下伸也訳、新曜社。/Narcissism : denial of the true self  / Alexander Lowen, Collier Books , 1985
The Alexander Lowen Foundation; Somatic Psychotherpy and Bioenagetic Anaysis.
アレクサンダー・ローウェンは、ウィルヘルム・ライヒの 弟子筋にあたるひと。2008年に物故している。いまからみれば、社会性の病理が個人にプレッシャーを与えて、ナルシシズム化などの「病理」をうむので、 そのような病んだ精神性を解放してやらないとならないというニュー・エイジと通じる療法仮説——ただ、僕に言わせれば「社会性の病理」が、ま、ICTの力 でいきつくところまでいきつつあるので、ここで踏みとどまって、観察をしつくして、病理を眺めることから自己の正常性を担保するフロイト的アプローチのほ うが有効だと思う。ライヒとならんで、ユダヤ的知性の多様性を教えてくれる人はあるが(→"Wilhelm Reich's Liberation of Sexual Desire")

※アレクサンダー・ローウェン 1991. 『ナルシシズムという病い : 文化・心理・身体の病理』森下伸也訳、新曜社。/Narcissism : denial of the true self  / Alexander Lowen, Collier Books , 1985
Metaverse
メタバース、メタヴァース
The word "Metaverse" is made up of the prefix "meta" (meaning beyond) and the stem "verse" (a back-formation from "universe"); the term is typically used to describe the concept of a future iteration of the internet, made up of persistent, shared, 3D virtual spaces linked into a perceived virtual universe.[1] The metaverse in a broader sense may not only refer to virtual worlds, but Internet as a whole, including the entire spectrum of augmented reality.[2]/ The term was coined in Neal Stephenson's 1992 science fiction novel Snow Crash, where humans, as avatars, interact with each other and software agents, in a three-dimensional virtual space that uses the metaphor of the real world.[3] Stephenson used the term to describe a virtual reality-based successor to the Internet.[4] Concepts similar to the Metaverse have appeared under a variety of names in the cyberpunk genre of fiction as far back as 1981 in the novella True Names. Stephenson stated in the afterword to Snow Crash that after finishing the novel he learned about Habitat, an early MMORPG which resembled the Metaverse.
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「メタバース」という言葉は、「メタ」という接頭語と、「バース」という語幹(「ユニバース」からの逆変換)からできている。この言葉は、一般的に、将来 のインターネットの概念を説明するために使われている。広い意味でのメタバースは、仮想世界だけでなく、拡張現実の全領域を含むインターネット全体を指す 場合もある。この言葉は、1992年に発表されたニール・ステファンソンのSF小説「スノークラッシュ」の中で生まれた。この小説では、現実世界のメタ ファーを用いた3次元の仮想空間の中で、人間がアバターとしてお互いに交流し、ソフトウェアエージェントとも交流している。ステファンソンはこの言葉を、 仮想現実をベースにしたインターネットの後継者という意味で使った。メタバースに似た概念は、1981年に発表された小説『True Names』の中で、サイバーパンクというジャンルの小説にさまざまな名前で登場している。ステファンソンは『スノークラッシュ』のあとがきで、この小説 を書き終えた後、メタバースに似た初期のMMORPGであるHabitat(棲み家)について知ったと述べている(→「メタバースにおける 係留点について」)。
デジタル・メディアの理解
新しいメディアの普及が人々の意識を変容したという ことを、指摘することはたやすい が、論証することはきわめて困難である。また、それ以前に、そのような問題提起の前提つまり、新しいメディアの普及が人間の認知に影響を与え、それが総体 としての人間の意識を変化させたという設問が、なぜ学問上の問題になり、それが真面目に議論されるようになったかということが、時代や社会の文脈から理解 される必要がある(→「社会意識の審級としてのメディア」)。
サイバー人類学(Cyber-Anthropology, Cybernetics Anthropology)
サ イバー人類学(cyber-anthropology, cybernetics anthropology)とは、人間の行動や社会性について考察する人類学のうち、とくにそ れらと情報通信機械の平行性および同型性に着目する研究理論上の立場のことをさします。このことから転じて、今日では広く代表的な情報通信機器であるイン ターネットに関わる〈新しい人 間環境〉について考察し、それについて〈フィールドワーク〉〈デジタル・フィールドワーク〉をおこなう人類学的研究をサ イバー人類学と名付けてもよいでしょう。
サイバー倫理学(cyber ethics) サイバー倫理(cyber ethics)とは、サイバー空間における倫理や道徳さらには法学にも関わる約束の事柄のことである。現今におけるサイバー空間の多くはインターネットの ことを さすので、インターネット倫理(internet ethics)ともいう。
サイバーパンク倫理学(Cyberpunk ethics) サイバーパンクたち(サ イバーパンカーズ, cyberpunkers)の行動の原理あるいは生き方はサイ バーパンク倫理学(Cyberpunk ethics)と呼ばれる(→サイバー・ オントロジー)。
メキシコにおけるスマートフォン市場の成長(2008-2016)と若 者の「依存」についての社会的危惧
More teens in Mexico feel 'addicted' to phones than in other countries,By Gwen Aviles, Oct.04, 2019. "From Twitter and Instagram to email and push alerts, mobile phones demand constant attention. Yet while such devices have transformed the lives of families across the globe, teenagers in Mexico report feeling more “addicted” to their phones than their peers in other countries, according to a new study"- https://nbcnews.to/3KDxQpy
「Twitter やInstagram、Eメールやプッシュ通知など、携帯電話は常に注意を払う必要がある。しかし、このようなデバイスが世界中の家族の生活を一変させる 一方で、メキシコのティーンエイジャーは、他の国の同世代よりも携帯電話に「依存」していると感じていることが、新しい調査によって明らかになった。」
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New study reveals more teens in Mexico feel ‘addicted’ to their mobile devices than teens in other countries surveyed, Oct. 01,2019. "Mobile devices are altering family life in Mexico, according to a first-of-its-kind study conducted by the USC Annenberg School for Communication and Journalism and Common Sense that examines device use, habits and attitudes of Mexican teens and their parents. More Mexican parents expressed concern about their teens’ use of mobile devices, and more teens reported feeling distracted and “addicted” to their phones than families in three other countries: United States, Japan and the United Kingdom....Close to half of teens (45 percent) surveyed in Mexico say they feel they spend too much time on their mobile devices, half say they “feel addicted,” and 77 percent of teens say they feel distracted daily by their mobile phones. Four out of five Mexican parents agree that their teens are distracted by these devices daily, and almost two-thirds feel they spend too much time on them and believe they are “addicted.”..Parents in Mexico are concerned about their teens’ mobile device use. Almost two-thirds of parents (64%) feel their teen spends too much time on their mobile device and believe they are “addicted” to their device (62%). Almost a third of teens (31%) think that their parents are “addicted” to their devices. Notably, almost three quarters of parents who say they “feel addicted” to their device have a child that “feels addicted” too, creating households where the entire family is more likely to “feel addicted” to their mobile devices..." https://bit.ly/3xms5sv
「USC Annenberg School for Communication and JournalismとCommon Senseが実施した、メキシコの10代の若者とその両親のデバイス使用、習慣、態度を調査した初めての調査によると、モバイルデバイスはメキシコの家族 生活に変化をもたらしていることが明らかになった。メキシコの親は、他の3カ国の家族よりも、10代の若者のモバイル機器の使用について懸念を示し、携帯 電話に気を取られ「中毒」になっていると報告する若者の数が多かった: メキシコの10代の若者の半数近く(45%)が、携帯電話を使う時間が長すぎると感じ、半数が「中毒になっている」と答え、77%の若者は携帯電話によっ て毎日気が散っていると感じていると答えている。メキシコの保護者の5人に4人は、10代の若者が毎日これらの機器に気を取られていることに同意し、3分 の2近くは時間をかけすぎていると感じ、「中毒になっている」と考えている。メキシコの保護者は、10代の若者のモバイル機器使用について懸念している。 保護者のほぼ3分の2(64%)は、10代の若者がモバイル機器に費やす時間が長すぎると感じており、「中毒」になっていると考えている(62%)。10 代のほぼ3分の1(31%)は、親が自分のデバイスに「中毒」になっていると考えている。注目すべきは、デバイスに「ハマっていると感じる」と答えた親の ほぼ4分の3は、子供も「ハマっていると感じる」ため、家族全員がモバイルデバイスに「ハマっていると感じる」傾向が強い家庭であることである」
サイバネティ クス
サ イバネティクス(cybernetics)は、制御システムおよび目的システムに関する広範な研究分野である。 サイバネティックスの核となる概念は、循環的因果関係またはフィードバックであり、そこでは、特定の状態の追求と維持、またはその崩壊を支援する方法で、 行動の観察結果がさらなる行動のための入力として取り込まれる。サイバネティクスは、循環的な因果関係の例である船の操舵にちなんで名付けられた。操舵者 (サイバーノーツ)は、それがもたらすと観察される効果に絶えず応答して操舵を調整することにより、変化する環境の中で安定したコースを維持する。循環的 な因果関係フィードバックの他の例としては、サーモスタットなどの技術的装置(ヒーターの動作が温度の測定変化に反応し、部屋の温度を設定範囲内に調節す る)、神経系を介した自発的な運動の調整などの生物学的例、会話などの社会的相互作用のプロセスなどが挙げられる。サイバネティクスは、生態系、技術系、 生物系、認知系、社会系など、どのような形であれ、また設計、学習、管理、会話、そしてサイバネティクスそのものの実践といった実践活動の中で、操舵術と してのフィードバックプロセスに関心を寄せている。
隔離(isolation)
ハンナ・アーレントによると、 アイソレーションすなわち隔離とは、政治領域においておこる現象である。例えば、私は一 緒に行動できる人がいないので行動できない。「アイソレーションと は、人々が共同の利益を追って相共に行動する彼らの生活の政治的領域が破壊された時に、この人々が追い込まれるあの袋小路のことである」[アレント 1981:319]。
孤立(loneliness)
ハンナ・アーレントによると、ロンリネスすなわち孤立とは人 間生活全般にかかわる[アレント 1981:320]。隔離されていなくても孤立を感じる(疎外感を感じる)ことがある。

孤独(solitude)
ハンナ・アーレントによると、アローンすなわち孤独とは1人 (alone)でいる状態であるが、シンボリックな意味が前面にでる。例えば人は一人でいることを必要とする[アレント 1981:320; Arendt 2004:613]
SNSとナルシシズム
ソーシャルネットワーキングサービスま たはSNS(ソーシャルネットワーキングサイトと呼ばれることもある)は、人々が個人的または職業的な内容、興味、 活動、背景、または実生活でのつながりが似ている他の人々とソーシャルネットワークまたは社会的関係を築くために使用するオンラインプラットフォームであ る。さて、トゥエンギとキャンベル(2011)は、SNSと世間のナルシシズム傾向に次のような警鐘を鳴らしている。「有名人を崇拝する風潮やインター ネットのソーシャル・ネットワーキング・サイトはナルシシストの振る舞いを助長し、ナルシシズムの基準を押し上げたのである」(トゥエンギとキャンベル 2011:50)。
简・M・腾格『我一代』邵文实、王爱、松崔庚訳、黑龙江教育出版社、2019年 在 这本发人深省的著作中,作者将出生于1970年代、1980年代和1990年代的人称为“我一代”,这一代人宽容自信、思想开放、雄心勃勃、却又玩世不 恭,压抑沮丧和孤独焦虑。作者根据大规模的代际研究的调查结果,加上跨越了60年的1300万调查对象的数据资料,腾格博士揭示出“我一代”多么的不同, 并就他们所拥有的未来和作为一个整体的社会做出了具有争议性的语言(出典:「我一代」百度)。
新型コロナ禍における大学教育
新型コロナウィルスと私たちのキャンパス

大学等における本年度後期等の授業の実施と新型コロナウイルス感染症の感染防止対策について(周知)[令和2年=2020年9月, 文部科学省, pdf]

コロナ禍での大学の変貌

大学そのものが内破しなければならない

コロナ禍を経由した時相において対面コミュニケーションの重要性はさらにあがるが、それはコロナ以前のお手軽な「対話のススメ」などではない

コロナ禍を経由した対面教育の課題

コロナパンデミック下におけるマクロウィキ大学のあり方

分析「生成AIの利活用に関する国立大学協会会長コメント」国大協News, 2023.05.29.
ナルシシズム(Narcissim)
「ナ ルシシズムは心理的状況と文化的状 況の両方を説明する言葉である。個人のレベルにおいてはナルシシズムとは「自己」を犠牲にしてなされる自分のイメージへの過剰なのめり込みと特徴づけられ るようなパーソナリティ障害である。……文化のレベルにおいては、人間的価値の喪失のうちに——つまり環境への関心、生活の質への関心、自己の同胞たる人 間たちに対する関心の喪失のうち——見出すことができる。(アレクサンダー・ローウェン 1991:1)※ローエンは、ニューエイジ系(→ライヒの弟子)のパーソナリティ心理学者.ただし、ローエンが指摘するナルシシズムの問題点は「身体的感 情の否定」であり、ナルシシズムの病理は、極めて観念論的であり、身体の欲望やその充足と精神的な満足がチグハグになっていることのように思える。
・アレクサンダー・ローウェン 1991. 『ナルシシズムという病い : 文化・心理・身体の病理』森下伸也訳、新曜社。/Narcissism : denial of the true self  / Alexander Lowen, Collier Books , 1985
iGen (i-Generation, internet-Generation)
iGen: Why Today's Super-Connected Kids Are Growing Up Less Rebellious, More Tolerant, Less Happy and Completely Unpared for Adulthood and What That Means for the Rest of Us[a]はジャン・トウェンジによる2017年のノンフィクションで、1995年から2012年に生まれたアメリカ人のライフスタイル、習慣、価値観を 研究し、スマートフォン普及後初めて青年期に達した世代[1]としたものである。トゥエンジはこの世代を「iGeneration」(ジェネレーションZ とも呼ばれる)と呼んでいる。彼女は、いくつかのポジティブな傾向があると主張する一方で、この世代がテクノロジーによって孤立していることに懸念を表明 している。

Z 世代の定義は1996-2010年代初期なので iGen世代と被る。

★Roberto J. González , Connected: How a Mexican Village Built Its Own Cell Phone. Univerwsity of California Press, 2020.

"This is the true story of how, against all odds, a remote Mexican pueblo built its own autonomous cell phone network—without help from telecom companies or the government. Anthropologist Roberto J. González paints a vivid and nuanced picture of life in a Oaxaca mountain village and the collective tribulation, triumph, and tragedy the community experienced in pursuit of getting connected. In doing so, this book captures the challenges and contradictions facing Mexico's indigenous peoples today, as they struggle to wire themselves into the 21st century using mobile technologies, ingenuity, and sheer determination. It also holds a broader lesson about the great paradox of the digital age, by exploring how constant connection through virtual worlds can hinder our ability to communicate with those around us."

「これは、メキシコの人里離れたプエブロが、あらゆ る困難を乗り越えて、通信会社や政府の助けなしに、独自の携帯電話ネットワークを構築した実話である。人類学者ロベルト・J・ゴンサレスは、オアハカの山 村の生活と、接続を追求するためにコミュニティが経験した苦難、勝利、そして悲劇を、生き生きとしたニュアンスで描いている。そうすることで、本書は、モ バイル技術、創意工夫、そして強い意志を駆使して21世紀への接続に奮闘するメキシコの先住民が今日直面している課題と矛盾を捉えている。本書はまた、バーチャルな世界を通じて絶え間なくつながることが、いかに周囲の人々とのコミュニケーション能力を妨げるかを探ることで、デジタル時代の大きなパラドックスについて、より広い教訓を与えてくれる」

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Maya_Abeja

Copyleft, CC, Mitzub'ixi Quq Chi'j, 1997-2099


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本研究はJSPS科学研究費 補助金(科研費)基盤研究(C) 20K01216.の助成を受けたものです。
Acknowledgement; This work was supported by JSPS KAKENHI Grant Number 20K01216.