われわれ自身の脱植民地化過程
(研究構想メモ)
Our decolonizing
process
for Indigenous People
☆ 脱植民地化には、2つの意味がある。まず最初に、(1)マクロな政治運動として「植民地主義を撤廃し、宗主国からの軛を外れて、独立国家として歩むこ と」である。先住民の政治的脱植民地化には、同一国民国家内における自治権や慣習法の実施、あるいは言語や伝統文化の中央政府からの承認や保護促進を要求 する権利がある。他方、(2)「精神(こころ)や思想の脱植民地化」とも言えるべきもので、脱植民地下状況にある個人(主体)や複数の個人、地域集団ある いは国民などの集合的な主体と してのアイデンティティを確立することである。先住民の「精神(こころ)の脱植民地化」とは、先住民文化に関連するミクロ政治的課題として固有言語や伝統 文化の復権、称揚、促進や、SDGsのような国際社会から様々な働きかけに対して、それを現地社会に適用させるために、先住民社会の「熟議」活動を通し て、(たとえそれが過去の彼らの社会の文化のインベントリーとして記録・記憶されていなくても)民主的で多様性を確保した社会参画を実践することである (これらは「デコロニアリティ・脱植民地性」過程と呼ばれる社会的な手続きプロセ スである)(未公開正式版:our_decolonizing_process_real.html)。
リ ンク(政治的プロセスとしての脱植民地化)
リ ンク(精神や思想の脱植民地化)
リ ンク(気候変動、環境、REDD+)
リ ンク(開発、工業化、文化変容)
リ ンク(食料主権、種子の主権)
リ ンク(伝統的知識(TK)文化遺産、文化のパテント)
リ ンク(先住民学習、知識の脱植民地化、歴史化)
リ ンク(慣習法、地域自治、政治、主権)
リ ンク(ジェンダー)
リ ンク(人種、民族)
リ ンク(イデオロギー)
リ ンク(その他のテーマ)
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先住民を「見る/見られる」あるいはアイデンティティを構成するインターセクショナルな階層性
個人 |
地域社会 |
ジェンダー・セクシュアリティ |
エスニシティ |
国民国家領域 |
ラテンアメリカ圏 |
国際社会 |
グローバル環境 |
★ 当初タイトル「脱植民地化の民族誌:ラテンアメリカ先住民へのアクションリサーチ」
『研究』という言葉自体が、先住民の言語の中
で最も汚れた言葉の一つである——リンダ・トゥヒワイ・スミス『脱植民地化の方法論:研究と先住民』1999. |
本研究は、ラテンアメリカの3つの国家領域に包摂されながらも、独自の
アイデンティテ
ィを継承、発展、再創造しているそれぞれの先住民集団が実践する「文化的脱植民地化︎」
のプロセスを民族誌的に記録することを目的とする。この領域では、先住民文化が国民文
化と混交融合をおこし、その現象は国内外に伝わり、新しい国家イメージをも形成してい
る。それゆえ、 (1)国家の先住民政策の歴史的検証をし、 (2)種々の政策に先住民側がどの ように応答したのか、 (3)先住民側がどのように自分たちの先住民性(Idigeneity)を継承 、発展、再創造しているのかを、インタビューと参与観察による民族誌的手法で明らかに する。 非西洋世界への調査が「新植民地科学」として批判されることを回避するためには 先住民に常識化された「脱植民地化の学問的パラダイム」を受け入れ、学問の通文化的な 普遍化をめざしたアクションリサーチの形態をとることが不可欠となる。本研究はそれに 対して理論的先鞭をつけるパイオニア的研究である。 |
【審問】何の脱植民地化なのか? ・研究の脱植民地化——立場論 ・人々の脱植民地化——アイデンティティ論 ・関係性の脱植民地化——政治的・法的システム(例:食料主権) |
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【命題】脱植民地化は「実践」のプロセスである |
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【調査研究】〜において、何を実践するのか? |
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【方法論】エスノグラフィーは質的研究である |
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1. 研究目的、研究方法、応募者の遂行能力(2ページ) ・中区分で審査されるので、複数の分野から多角的に審査(→含意:どの分野の専門家にもわかりやすく書け) 1)研究の目的 2)その研究目的を達成するための研究方法(研究体制を含む;研究組織の研究者(PIと分担研究者)および研究協力者のそれぞれの役割) 3)応募者の研究遂行能力(これまでの研究活動+業績)の具体的な内容等。研究構想に直接関係しないものを含めてよい。国際共同研究や海外機関での研究歴 等を記載する。 |
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2.
挑戦的研究としての意義(本研究種目に応募する理由)(1ページ) ・これまでの学術の体系や方向を大きく変革・転換させる潜在性を有する挑戦的研究 ・1)これまでの研究活動を踏まえ、この研究構想に至った背景と経緯 ・2)学術の現状を踏まえ。本研究構想が挑戦的研究としてどのような意義を有するか?、探索的性質の強い、あるいは芽生え期の研究計画である場合には、挑 戦的研究としての可能性を有するか? |
日本では、先
住民ならびに先住民研究の脱植民地化︎という用語は、それほど研究者の間に
膾炙していない。また報道用語でもほとんど聞かれない。しかしながら、海外とりわけ、ラ
テンアメリカ研究者と先住民当事者(学生や学者が含まれる)の間では、先住民社会の変革
やその動機付けの用語として、とりわけ2001年ニューミレニアム以降は、文字通り必須の学
術用語になっている。その理由は(1)社会科学におけるポストコロニアル研究が、世界の
開発途上地域に実装されるようになったこと、(2)文字通り被抑圧者による被抑圧者のた
めのサバルタン研究が隆盛するという刺激のもとで、先住民あるいは非白人から研究者を輩
出し、スタンドポイント理論すなわち「従来当たり前だと思われてきた社会体制やコモンセ
ンス(常識)のあり方」の複数性、とりわけ被抑圧者は抑圧者が当たり前に考えていることが、
真逆に見えることが、学問の中心課題になったことがあげられる。このような理論生成の背
景を理解しないと、リンダ・トゥヒワイ・スミスが指摘する「『研究』という言葉自体が、
先住民の言語の中で最も汚れた言葉の一つである」というメッセージの内容が理解できない
はずだ。しかしこのフレーズは脱植民化研究というパラダイムの中で仕事する研究者や学
生・院生たちには、当たり前の出発点なのである。これが、本研究が先行研究にない挑戦的
特色の第1点である。
②トゥヒワイ・スミスが指摘していることが実際に常識化すると我々はもはや海外の当該知
識体制での研究ができない。自然科学研究では、「新植民地科学(neo-colonial science/
research)」と批判され、国際的に著名なジャーナルでは現地研究者の研究への参与等を明
確に示さないと掲載が延期される事態も起こっている。この状況を克服するための方法を本
研究は模索する。挑戦的特色の第2点目の理由は、先住民社会の変動研究にとどまらず、脱
植民化状況に直面している調査研究状況に直面し、日本のフィールドサイエンティストが脱
植民化に今後対応することができるための野心的な挑戦になるからである。
この状況を克服するための方法論的含意は以下のとおりである: (1)植民地状況のなか で、植民地支配を強化することに貢献した可能性のある「植民者による先住民に対するフィ ールドサイエンス」の歴史的反省が不可欠である。そのことを踏まえて、 (2)これまでの 「先住民に対するフィールドサイエンス」が、二度と再び(nunca más)植民地的搾取構造 をもたないために、一種のリヴァースエンジニアリング的な解析(池田Online)が必要になる。 その解析をもとに、 (3)植民地的搾取構造をもたない「先住民に対するフィールドサイエン ス」を、先住民との「対話」を通して模索する。現地の先住民の知識人・インテレクチュア ルとの「熟議」が必要になり、会議録を含めた「先住民に対するフィールドサイエンス」の 脱植民地化に関するミニワークショップの機会をもち記述する必要がある。本プロジェクト は、ラテンアメリカの3つの調査地における、それらの可能性を模索する研究であり、先駆 的で野心的研究の第3点目の理由としている。 |
3. 人権および法令へ等の遵守への対応(1ページ) |
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Out of the dark night : essays on decolonization, Achille Mbembe. Columbia University Press c2021 Achille Mbembe is one of the world's most profound critics of colonialism and its consequences, a major figure in the emergence of a new wave of French critical theory. His writings examine the complexities of decolonization for African subjectivities and the possibilities emerging in its wake. In Out of the Dark Night, he offers a rich analysis of the paradoxes of the postcolonial moment that points toward new liberatory models of community, humanity, and planetarity. In a nuanced consideration of the African experience, Mbembe makes sweeping interventions into debates about citizenship, identity, democracy, and modernity. He eruditely ranges across European and African thought to provide a powerful assessment of common ways of writing and thinking about the world. Mbembe criticizes the blinders of European intellectuals, analyzing France's failure to heed postcolonial critiques of ongoing exclusions masked by pretenses of universalism. He develops a new reading of African modernity that further develops the notion of Afropolitanism, a novel way of being in the world that has arisen in decolonized Africa in the midst of both destruction and the birth of new societies. Out of the Dark Night reconstructs critical theory's historical and philosophical framework for understanding colonial and postcolonial events and expands our sense of the futures made possible by decolonization. Acknowledgments Introduction 1. Planetary Entanglement 2. Disenclosure 3. Proximity Without Reciprocity 4. The Long French Imperial Winter 5. The House Without Keys 6. Afropolitanism Epilogue: The Politics of the Future World Notes. |
闇夜から抜け出して : 脱植民地化についてのエッセイ, アキレ・ムベンベ. コロンビア大学出版局 アキーレ・ムベンベは、植民地主義とその結果に対する世界で最も深い批評家の一人であり、フランス批評理論の新しい潮流の出現における主要人物である。彼 の著作は、アフリカの主体性にとっての脱植民地化の複雑さと、それをきっかけに生まれる可能性を検証している。Out of the Dark Night』では、ポストコロニアルのパラドックスを豊かに分析し、共同体、人間性、惑星性の新たな解放モデルを指し示している。アフリカの経験について のニュアンスに富んだ考察の中で、ムベンベは市民権、アイデンティティ、民主主義、近代性についての議論に大きく介入している。彼はヨーロッパとアフリカ の思想を巧みに横断し、世界についての一般的な書き方や考え方を力強く評価する。ムベンベはヨーロッパ知識人の盲点を批判し、普遍主義を装って排除を続けるポストコロニアル批判にフランスが耳を傾けなかったことを分析する。彼はアフリカ近代の新たな読解を展開し、アフロポリタニズムの概念をさらに発展させる。アフロポリタニズムとは、破壊と新たな社会の誕生の只中にある脱植民地化されたアフリカで生まれた、世界における斬新なあり方である。『闇夜から』は、植民地時代とポストコロニアル時代の出来事を理解するための批評理論の歴史的・哲学的枠組みを再構築し、脱植民地化によって可能となった未来についての私たちの感覚を拡張する。 はじめに 1. 惑星の絡み合い 2. 閉鎖性 3. 相互関係なき接近 4. フランス帝国の長い冬 5. 鍵のない家 6. アフロポリタニズム エピローグ 未来世界の政治学 |
文 献
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CC, Mitzub'ixi Quq Chi'j, 1996-2099