はじめによんでください

年表:人種主義

Chronicle of racism

Ruth Fulton Benedict, 1887-1948

解説:池田光穂

人種主義(レイシズム)とは、ルー ス・ベネディクト (1997: 116)によると「ある民族集団が先天的に劣っ ており、別の集団が先天的に優等であるように運命づけられている、と語るドグマ」のことである (Benedict 1945:98)。言い方をかえると「人種とは、人間の[下位]集団に固有の——すなわち否定できない——属性が確かに存在するという、心理的かつ社会的 オブセッション(強迫観念)である」。今 日では、人間集団の社会的違いを、生物学を基調とする本質主義的な種的な違いをあら ゆるタイプの差別や 権力にもとづく選別に利用する考え、をそう呼ぶことができる(→より詳しい解説は「人種主義(レ イシズム」と「人種主義(レイシズム)理論」で説明する)。

★レイシズム年表

711 イベリア半島にムスリムが居住するようになる

1441 最初のアフリカ人奴隷がポルトガルに連れてこられる

1492 コロンブスが新大陸に足を踏み入れる/ムスリムがヨーロッパから排斥 される(レコンキスタ)

1542 ラス・カサス『インディアスの破壊についての簡潔な報告』

1550 ラス・カサスとヒネス・セプルベーダの論争(バリャドリード論戦)

1619 北アメリカに最初の黒人奴隷が連れてこられる

1684 フランソワ・ベルニエ(François Bernier)『地上の新しい分割』

1735 リンネ『自然の分類』

1749 ビュフォン『自然史』

1774 ヘンリー・ケイムズ卿(Henry Home, Lord Kames)『人類史のスケッチ』

1775 ブルーメンバッハ『人類の自然分類について』

1776 アメリカ独立宣言

1787 トマス・ジェファーソン「バージニア州に関するノート」発表

1789 アメリカ合衆国憲法の採択、フランス革命はじまる

1798 トーマス・ロバート・マルサス「人間の人口についてのエッセー」

1808 アメリカ合衆国奴隷制を廃止

1813 ジェームス・コールズ・プリチャード(James Cowles Prichard)『人類の形質史に関する研究』

1815 サ ラ・バートマン死 亡、ジョルジュ・キュビエ(1769-1832)は彼女を解剖する。ナポレオンはフランスにおける奴隷売買を禁止する。

1817 アメリカ植民協会(American Colonization Society)の設置

1833 大英帝国からの奴隷解放

1839 サムエル・モートン『クラニア・アメリカーナ』出版

1840 アンダース・レツィウス(Anders Retzius)頭蓋指数 (cephalic index)を考案

1844 サムエル・モートン『クラニア・アエジプティアカ』出版

1845 ジョサイア・ノット(Josiah Nott)『コー カシアンとニグロ人種の自然史』を出版

1850 ロバート・ノックス(Robert Knox)『人間の人種』出版

1853[55?] アルチュール・ド・ゴビノー『人類の不平等に関する試論』

1856 ポー ル・ブローカ『人間の雑種』

1859 ダーウィン『種の起源』

1861 アメリカ南北戦争(the Civil War)勃発

1862 ハー バート・スペンサー『第一原理』出版

1863 ジェームズ・ハント(James Hunt)ロンドン人類学協会(London Anthropological Society)設立

1863 アルフレッド・ラッセル・ウォーレス(Alfred Russel Wallace)「『自然選択理論』から導かれる人種の起源と人間の古層」を出版(→人種の自然選択についての言及)

1865 

南北戦争終焉。合衆国における奴隷制の 終焉。

ジョン・ラブボック(John Lubbock)『先史時代の人骨と現在の野蛮人の慣習とマナーに関する図説』を出版

1868 エルンスト・ヘッケル『生物創造の歴史』

1869 フランシス・ゴルトン『遺伝的天才』出版

1871 

ダーウィン『人間の由来』出版

英国、民族学会と人類学会が統合して 「大英帝国アイルランド人類学協会(Anthropological Institute of Great Britain and Ireland)」が成立

1874 リチャード・L・ダグダーレ(Richard L. Dugdale)『ジュークス家:犯罪、貧困、遺伝の研究(The Jukes: A Study in Crime, Pauperism, Disease and Heredity.)』が出版

1882 カール・ピアソン(Karl Pearson)が『科学の文法』を出 版。合衆国では「中国人排斥法」が成立。

1883 ルー ドヴィヒ・グンプロヴィッチ(Ludwig Gumplowicz)『人種の闘争(Der Rassenkampf)』を出版

1888 アメリカ民俗学会が設立される

1891 ヴィルヘルム・シャルマイヤー『文明人の差し迫った身体の退化と医療専門家 の国有化について』を出版(ドイツ)

1895 アルフ レート・プレッツ『人種衛生の基礎』(Grundlinien einer Rassenhygiene)(ドイツ)

1896 

W.E.B.デュボイス『フィラデルフィアのニグロ』を出版

プレッシー対ファーガソン裁判( Plessy v. Ferguson)において「分離すれども平等(separate but equal)」と判決がくだり、人種の分離が正当化され る(Brown v. Board of Education, 1954ま で続く)

ジョルジュ・ヴェシェ・ド・ラプージュ『社会選択』を出版(フランス)

1899 

ウィリアム・Z・リプレー(William Z. Ripley)『ヨーロッパの人種』出版

ヒューストン・スチュアート・チェンバレン『19世紀の基 礎』出版

ジョルジュ・ヴェシェ・ド・ラプージュ『アーリア人:その社会的役割』を出 版(フランス)

1902 OEDのレイシズム記載

1905 

ボアズはコロンビア大学に正式に就職(-1937年)(この頃)ボアズがアメリカの人類学会の主導的な立場になる

ドイツで人種衛生学会成立

1906 アメリカ育種協会が成立

1910 コールドスプリングハーバー実験進化研究ステーションに優生学記録オ フィス(Eugenics Record Office)ができる。

1911 ボアズ『未開人の心』を出版

1912 ヘンリー・ゴダード(Henry H. Goddard) 『カリカックの家族:精神薄弱における遺伝の研究(The Kallikak Family: A Study in the Heredity of Feeble-Mindedness)』を出版

1914 第一次世界大戦勃発

1916 

マディソン・グラント『偉大なる人種の消滅(The Passing of the Great Race (1916))』を出版

アーサー・エスタブルック(Arthur Estabrook) 『1915年のジュークス家』を出版

1918 第一次世界大戦終戦

1919 Red Summer(レッド・サマー「赤い夏」):白人による黒人に対する襲撃多発事件

1922

カール・ブリンガム(Carl Bringham)『アメ リカの知性研究』を出版

ハリー・ラーフリン(Harry Laughlin) 『合 衆国における優生学的去勢』を出版(→「遺伝病の子孫の予防に関する法」)

ハンス・ギュンター(Hans Friedrich Karl Günther)『ドイツ人の人種研究(Rassenkunde des deutschen Volkes)』を出版

ロスロップ・ストッダード(Lothropn Stoddard)『有色人の上げ 潮(The Rising Tide of Color Against White World-Supremacy)』

1924 アメリカ合衆国「移民制限法」

1925 アラン・ロック(Alain Locke) 『新しいニグロ(The New Negro)』を編集出版

1927 

Buck v. Bell, 274 U.S. 200 (1927)は、アメリカ合衆国 最高裁判所の判決で、オリバー・ウェンデル・ホームズ・ジュニア判事によって書かれものである。この判決は、「国家の保 護と健康のために」知的障害者を含む不適格者の強制不妊手術を許可する州法は、アメリカ合衆国憲法修正第14条の適正手続条項に違反しないと判断した。こ の事件は、しばしば史上最悪の最高裁判決として引用される。

カイザー・ヴィルヘルム人類学・人類遺伝学・優生学研究所が設立

1929 チャー ルズ・ダベンポートCharles Davenport)とモリス・ステガーダ(Morris Steggerda) が 共著で『ジャマイカを横断する人種(Race Crossing in Jamaica)』を出版

1931 アーサー・ファウセット(Arthur Fauset)が 『ノーバ・スコシアの民俗』を出版

1933 

アドルフ・ヒトラー総統に就任

「国民及びライヒの危難を除去するため の法律」(いわゆる全権委任法)を成立させる

1935 

ドイツ・ニュルンベルク人種法

ジュリアン・ハクスレー(Julian Huxley)とA.C.ハッドン(Alfred Cort Haddon)が共著で『我々ヨーロッパ人』を出版

オットー・クライネベルグ(Otto Klineberg) 『人種の違い』を出版する

ゾラ・ニール・ハーストンZora Neale Hurston)『驢馬と人(Mules and Men)』を出版

1937

オトマール・フライヘア・フォン・ヴェルシュアー(Otmar Freiherr von Verschuer)『ユダヤ人の人種生物学』を出版

アリソン・デイビス(Allison Davis) と ジョン・ドラード(John Dollard)『南部都 市におけるカーストと階級』を出版

1939

ヒトラー慈悲殺を1939年9月1日 医師たちに与える(→T4

アメリカの?遺伝学者たちはナチのレイ シズムに非難の声明をあげる

ヒトラーはポーランドに侵攻、第二次大 戦がはじまる

フランクリン・フレイザー(E. Franklin Frazier)『合衆国におけるニグロ家族』を出版

1941 メルヴィル・ハスコーヴィッツMelville J. Herskovits) 『過去のニグロの神話』を出版

1942 ア シュレイ・モンタギュー(Ashley Montagu)『人類の最も危険な神話:人種に関する誤信』を出版

1943 

デトロイト、ロスアンゼルス、ニュー ヨークで人種暴動がおこる

ルース・ベネディクトとジーン・ウェルトフィッシュ(Gene Weltfish)が共 著『人種(邦訳:人種主義)』を出版

大東亜会議で日本とその同盟国は人種差 別の撤廃を目的とすることを宣 言

1944 ミルダール『アメリカのジレンマ:黒人問題と近代民主主義』

1945 第二次大戦終結

1946 L.C.ダン(L.C. Dunn)とテオドシウス・ドブザンスキー(Theodosius Dobzhansky)が共著で『遺伝・人種・社会』を出版

1947 米国政府『それらの権利を保証する』と人種の差異をこえてアメリカ市 民権があることを示す。

1948 国連で世界人権宣言(UDHR)採択

1950 

ウイリアム・ボイドが『遺伝学と人種』 を出版

テオドール・アドルノ、エルス・フレン ケル-ブラウンズウィック、ダニエル・リビングストン、ネーヴィット・スタンフォードが『権威主義的パーソナリティ』を出版

シャーウッド・ウォッシュバーンがコー ルド・スプリング・ハーバーで「新しい自然人類学」を提唱

ユネスコ『人種問題』(→人種に関するユネスコ宣言(1950)

1951 

ユネスコ『人種問題』の第二宣言をだす

アーレント『全体主義の起源』

アブラハム・カーディナーとライオネ ル・オヴェセイが共著で『抑圧の印:アメリカンニグロのパーソナリティ研究』を出版

1952 フランツ・ファノン『黒い肌、白い仮面』を出版

1954

Brown v. Board of Education, 1954におい て、人種の分離は平等を保証するものでないと、1896年のプレッシー対ファーガソン裁判( Plessy v. Ferguson)において「分離すれども平等(separate but equal)」の判断を覆す。

ゴルドン・オールポートが『偏見の本 質』を出版

1955 モンゴメリー・バス・ボイコット

1957 アーカンソー、リトルロックのセントラル高校の分離教育が廃止(命 令)

1959 アーカンソー州リトルロックにおける学校統合反対集会

1960 ノースカロライナ、グリースボーロで黒人大学生たちの分離レストラン への座り込み活動

1961 フランツ・ファノン『呪われた大地』を出版

1962 フランク・リビングストン「人種の不在について」を発表

1964 市民権法が可決

1965 ダニエル・パトリック・モイニハン『ニグロ・ファミリー:国民運動の 事例』を出版

1966 「あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約」

1967 

ストーケリー・カーマイケルとチャール ズ・ハミルトン『ブラックパワー』を出版

ゲリー・マルクス『抗議と偏見』を出版

1968 マーチン・ルーサー・キング・ジュニア、アメリカ心理学会で講演

1969 アーサー・ジャンセン「どのように我々はIQと学業の達成を成し遂げ たか?」を発表

1970 ジャーナル・オブ・ブラック・スタディーズ誌、創刊

1972 

ロバート・ブレンナー『アメリカにおけ る人種的対立』

リチャード・ルウェンティン『人間の多 様性への配分』を出版

1973 ジョイス・ラドナー『白い社会学の終焉』

1976 フーコー「知への意志」

1978 

ジョン・オグブ『マイノリティへの教育 とカースト:通文化的視点からみたアメリカの教育』

国連教育科学文化機関(UNESCO) による人種と人種的偏見に関する宣言

1984 チャールズ・マレー『失われた大地』

1994 リチャード・ヘルンシュタインとチャールズ・マレー『ベルカーブ』

1996 アメリカ心理学会「知性:知っていることと知らないこと」

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リンク(より複雑なリンク集は→「人種 主義をめぐるポータル」へ)

人種主義に対する科学的な批判

ナチスドイツの人種主義政策

文献

その他の情報

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Copyleft, CC, Mitzub'ixi Quq Chi'j, 1996-2099

ニュールベング法(1935)

The Nuremberg Laws (German: Nürnberger Gesetze) were antisemitic and racist laws in Nazi Germany.