じめに よんでください

高齢者研究への招待
Introduction to Aging Research in Cultural Anthropology

池田光穂

高齢 者に対する否定的あるいは肯定的ステレオタイプも、ともに、高齢者に対する「事実認識」をねじ曲げ、研究者にとって、永遠につかみ所のない概念になりかね ない。研究者は、高齢者に対するこのような偏見から「なるべく」自由になるように心がけるようにすべきだ。研究者の前にいるのは、「高齢者一般」ではな く、「具体的に顔をもった個別の高齢者」なのである(→「老年人類学入門・加齢現象の文化人類学入門」)。

高 齢者に対する偏見(否定的ステレオタイプ)
事 実(パルモア 2002:44-56)
1.病気がちである

2.性的に不能である

3.醜い

4.知能が衰退する

5.情動が不安定、ないしは精神病である

6.役にたたない

7.孤立している

8.貧困である

9.うつ病をわずらう

10.注意が散漫である


高 齢者に対する偏見(肯定的ステレオタイプ)
事 実(パルモア 2002:65-74)
11. 親切である

12.知恵がある

13.頼りになる

14.裕福である

15.政治力をもつ

16.自由である

17.永遠の若さをもつ

18.幸せである






高齢者に関するリンク(サイト内)について

こ のページはもともと、ジャレド・ダイアモンド『昨日までの 世界』読 解「高齢者への対 応——敬うか、遺棄するか、殺すか?」から出発し、発展させたものである。以下には、ページ内容の重複があり、不必要な部分もあるかもしれない が、歴史的資料としてそのまま掲載(必要に応じて更新)する。

文化人類学が問いかける『昨日までの 世界』における、高齢者解釈の妥当性に関する審問——同時に復習ノート

  1. フィージー諸島ビティレブ島の男性は、なぜ「アメリカって国は、年寄りを捨てたり、自分の両親の面倒をみない国なんですか!」って、この 著者ジャレッド・ダイアモンドに怒ってみせたのでしょうか?(上:p.358)
  2. 高齢者の社会的処遇における問題のひとつに、何歳をもって「高齢者」とみなすのかという定義が一律で定められていないという問題があると 述べられている(上:p.360)。なぜ、世界統一基準で高齢者を定義する年齢が定められないのか?とりわけ伝統社会における「高齢者像の多様性」に着目 して論じてみましょう。
  3. 高齢者の社会的処遇における問題の別のひとつに、高齢者の生存状況の多様性がある(→2.の課題を参照)。ダイアモンドは、その多様性を 生む理由に(α)社会の物質的な側面における相違、と(β)社会の文化的価値観の相違、という2つのものをあげている(上:p.361)。このことにつ き、第6章であげられたさまざまな事例をあげながら、〈このように高齢者の生存状況の多様性は、高齢者の処遇の物質的な理由と高齢者処遇の文化的価値観の 相違に根ざすのである〉と結論づけられるような、論述を完成させてみなさい。
  4. 高齢者に対する処遇の「楽観主義的理想論」とはどのようなものか、まとめてみなさい(上:pp.362-363)。
  5. 高齢者に対する処遇の「楽観主義的理想論」に対して、ジャレッド・ダイアモンドは、「人はみな、高齢者だろうとなかろうと、子どもに快適 な暮らしをさせ、自分もまた快適に暮らしたいと願う」のだとまとめている。このような主張がなぜ、「楽観主義的理想論」と相反するのか、簡潔にまとめてみ なさい(上:pp.362-364)。
  6. 「子どもがダーウィン流の考えの道筋にそって行動すると」子どもが年老いた親の面倒をみるべきである、という見解を、ダイアモンドは「自 然淘汰の原則」をもとにそれを批判している。では、ダイアモンドが批判して止まない、「子どもがダーウィン流の考えの道筋にそって行動すると、子どもが年 老いた親の面倒をみるべきである」という〈誤った推論〉は何が間違っているのか?検討しなさい(上:pp.362-364)。
  7. なぜ移動型の狩猟採集民は、子どもが親のケアを放棄してしまう。棄老してしまうことが多いのか?その理由を考えてみよう(上: pp.364-365)。
  8. 棄老が移動型の狩猟採集民を中心にすることの他に、そのような生業に従事する人びとの生息環境について、ダイアモンドは指摘している。そ のような環境とはどのようなものか?(上:p.365)
  9. 上掲の質問(8.)で指摘された環境に住む人びとでも、棄老が起こり難いこともあるのはなぜか?(上:p.365)
  10. 棄老の様式についてジャレッド・ダイアモンドは次の5つの方法を述べている。その具体的な方法について、それぞれ簡潔に解説しなさい: (1)ネグレクトあるいは放置死(上:p.366)、(2)意図的な置き去り(上:pp.366-367)、(3)自殺の教唆(上:pp.367- 368)、(4)自殺幇助あるいは嘱託殺人(上:pp.368-369)、(5)当人の同意なしの殺害(上:p.369)。
  11. 陰惨な棄老の事例に紹介したあとに、レイテ沖海戦の日本側の責任者であった日本海軍の栗田健男(1889-1977)元中将に対するウィ ンストン・チャーチルの言「同じ試練に耐え抜いた者だけが、彼を審判することができるだろう」を、ジャレド・ダイアモンドはなぜ引用したのだろうか?考え てみよう。
  12. ダイアモンドによると、採集狩猟社会において、高齢者ができるサービスは、(α)どの世代でも提供できるサービス、と(β)高齢者ならで はサービスの2つに分けている(上:pp.370-374)。そのことにつき、解説してください。
  13. 伝統的な社会における「適応主義の観点」とはなにか?説明をしなさい(上:p.370)。
  14. ジャレド・ダイアモンドが、ソロモン諸島レンネル島で経験した、その社会の老人の言う「フンギケンギの後だけ食べる」ということは何のこ となのか? フン ギケンギとは何であるのか?またこの社会における老人の「価値」についてダイアモンドが何を言おうとしているのかについて解説しなさい(上:pp.374 -375)。
  15. 現代アメリカにおいて高齢者の地位が低い理由を、ダイアモンドはつぎの3つの観点から説明している:(α)労働論理の価値観、(β)アメ リカ特有の価値観、(γ)若さへの礼讃(上:pp.380-385)。それらのことについて具体的に解説しなさい。
  16. 伝統社会における高齢者が尊敬(リスペクト)される状況について、ダイヤモンドは、(1)食の禁忌(タブー)、(2)若い女性への性的な 禁忌(タブー)、(3)所有権がもたらす影響、の三点について解説している。それぞれ、事例を交えて解説しなさい(上:pp.387-391)。
  17. ジェロントクラシーに対する反対語は何というのか?
  18. エンプティネスト・シンドローム(空の巣症候群)とはなにか?説明しなさい(上:p.396)。
  19. ダイアモンドがいう高齢化社会への対応のひとつである「祖父母としての伝統的役割の再認識と、その役割の復活」について説明しなさい (上:pp.401-404)。
  20. ダイアモンドがいう高齢化社会への対応のひとつである「急速な技術革新と社会的変化への対応」について説明しなさい(上:pp.402- 404)。
  21. ダイアモンドがいう高齢化社会への対応のひとつである「加齢にともなう心身の変化、心身の強みと弱みの変化を理解し、活用すること」につ いて説明しなさい(上:pp.404-406)。

+++

****

★「高齢化社会のデザイン」からリサーチマップ集

【高齢化社会のデザイン:コミュニティから発信する【このページ】
「高齢化社会」の理想と幻想(1990)
2025 年問題(日本の高齢化問題)
老人問題・高齢化社会・ 研究叢書
□老年人類学入門・加齢現象の文化人類学入門

エイジングの文化人類学
老人が尊敬される/軽蔑される社会的メカニズムについて
認知症、痴呆症、ぼけ
齢者への対応——敬うか、遺棄するか、 殺すか?
従 属人口:じゅうぞくじんこう, dependent population
生きのびるための関わり合いと、そのデザイン
社会福祉とネオリベラリズム政策 社会文化的「ぼけ」から社会医療的「認知症」へ
老人虐待の起源
コミュニティに基礎をおく参加型研究 (CBPR)とは何か?
プライマ リ・ヘルス・ケア 2.0について
そ の名は「定常型社会」
持続的開発目標(SDGs)
アクティブ・エイジング
医療介護の現場における身体コミュニケー ション
チャート式医療社会学

高齢者の外傷後成長と認知症に関する学際的研究に参加して
お灸をすえ る:鹿児島三島のヤイトヤキ
医 療労働市場と医療労働者の国際移動 に関する研究

マインドマップ:「虚構としての認知症」

語りをのこす行為

現代社会が抱える問題
国際労働移民の受け入れの問題:日本のケース
戦 争とアルツハイマー
John C. Campbell『日本政府と高齢化社会』ノート
認知症コミュニケーションへの招待
コミュニティ
コミュニティについて考える
ぼけの復権をめざして!
老いのパラドックス
私 たちは多文化医療 について何を考えないとならないか?
テキスト編
スライド編
認知症・経済格差・社会関係資本・トラウマ -レジリアンス
国連の持続可能な開発目標とグローバル・ イシューズ
進化生物学と医療社会学
安心して徘徊できる社会は可能か? 協働術A:ネオ・アクションリサーチの探 究
2017年度版
2018年度版
外国人看護師・介護福祉士候補者の受入れ
き地 医療研究 EPA にもとづく看護師・介護福祉士候補者の受け入れ制度について考える
マーガレット・ロック著『アルツハイマー の謎』
医療やケアのグローバル化に伴うコミュニ ケーションの問題をあぶり出す
グローバル・スタディーズ・批判 移民
ASEAN経済共同体(AEC)・EPA状況下の医療保健人材の東アジア域内移動に ついて
John C. Campbell『予算ぶんどり : 日本型予算政治の研究』ノート
ジャレド・ダイアモンド『昨日までの 世界』問題集
グローバル・イシューズと先住民
アジアの域内労働移動のトレンド
マ クロウィキノミクス・研究・ノート
スティグリッツ+グリーンウォルド『学習する社会を創造する』を読む
安倍晋三首相による日本政府の国際保健に対する取 組み声明について
医療人類学における生命倫理学
教育を通した人類学的デモクラシーの実践
予算編成の政治学
フーコー の生権力論
大熊由紀子 「ケアの思想」を読む
学生・院生の社会化に必要なのか?
Florence Nightingale
未開社会における安楽殺の倫理
アジアの〈こころ〉と〈からだ〉
医療社会学語彙集
認知症者の世界へのマッピング
認知症研究とロボットとの共存
見えない障害
ヒューマン・サービスに関わる科学とは?
ケアの思想・叢書
薬物・人間・社会の実践的比較文化論
看取り力から「看取られ力」へ の構造転換
認知症ケアの創造:その人らしさの看護へ

医療人類学辞典
嬰児殺しと棄老に関する考察ノート
コミュニティにもとづく参加型研究
ヘーゲルと親殺し
生・権 力(せい・けんりょく)
「支配的存在」を名指し、可視化する試みについて
マーガレット・ロックの医療人類学
医療人類学:高知大学2009
【老人】が尊敬される/排除されるメカニズムについて→
エグゼクティ ヴ・ホテルの老人
老いること〈労 働〉の価値概念の変遷について
パーソンズ「老人の 健康と社会の成長」ノート
『老人Z』をめぐる議論
ベイルイマン『野いちご』(1957)[読解ならぬ]視解
映画『別離』を通して認知症の人について考える
私たちの高齢者に対する人道的対応について〈異文化〉の者が私たちに激高する時
介 護の社会的問題および介護保険法用語集・定義集
エイジズム
嬰児殺しと棄老の文化的解釈
虚構としての認知症
高齢者研究への招待
「よい死に方」について考え、そして行動してみよう!
在 日外国人支援の現場における参与実践
医療化
現代の棄老としての 安楽死と尊属殺人
浦島太郎:認知症コミュニケーションにおける〈時間感覚の相対論〉について
エイジレス・セルフ
アンセルム・ストラウスの医療社会学
リップ・ヴァン・ウィンクルと入植者たちの啓蒙について
姨捨伝説・異説
ヘーゲル哲学におけ る死の概念
現場力と状況学習の関係
今村充夫『日本の民間医療』研究ノート
マーガレッ ト・ミード『サモアの思春期』読書ノート
上野千鶴子『資 本制と家事労働』再入門!
ルー ス・ベネディクト『菊と刀:日本文化の諸パターン』1946
老人の地位処遇に関 するドナルド・カウギル(Donaldo O. Cawgil, 1972)の仮説
心的外傷後ストレス障害
トラウマを想起することに関するエッセー
心と社会 狂気 をどのように捉えればいいか?
ストレス理 論の使われ方
癒しを見る眼
プナン民族誌と老人
〈こころ〉と社会
書評『苦悩することの希望:専門家のサファリングの人類学』浮ケ谷幸代編著
専門家の横暴について
現代社会を考える上 でもっとも代表的な病気とは?
病いと疾病

サンブルにおける長老制
W.H.R.リヴァーズ
社会科学への審問としての強制絶滅収容所
ゴジラと現 代社会
トランスマイグレーションの倫理学
多文化共生はじめの一歩
シリオノの高齢者の 取り扱い
我々は何をなすべきか
Challenging to Our low-birth-rate-hyper-aging-society: Japanese government, health sectors, and citizen
認知症倫理学は可能か?(ハンバーガー倫理学について
薬物利用者の高齢化について(ハームリダクション政策
Harm Reduction
エルマン・サーヴィ スの〈狩猟民の長老は尊敬される〉説
ヘルスコミュニケーション研究リソース
From Sickness to Badness:opular images on "Boke" (senile dementia and other related symptoms) in Japan.
おサキさんの老後は「標準的な老女」のライフの基準から外れてしまうのだろうか?
「年寄りはそう信じているんです」——犬と人間の共存に関する覚え書き
「年寄りが教科書を書く」——文化人類学に体系はあるのか?
棄老の伝説は殉死の 伝統を誤解したものである——中山太郎説
健康転換
ユマニチュードについて学ぶ
Alive Inside(内なるいのち)の衝撃
その名は 「定常型社会」
国際労働移民の受け入れの問題:日本のケース
利他行動の進化論的 解決を「老人殺し」に適応できるか?
アイデンティティ
医療過誤
多文化 共生社会とプライマリヘルスケア
多 文化共生保健コミュニケーター
医療と文化の多元主義:日本事例の検討
未開社会における安楽殺の倫理
生きることの意味
国連の持続可能な開発目標とグローバル・イシューズ
生 活知(せいかつち)
ウィ ル・キムリッカの「多文化主義」講義
民族=国家[国民]医療
安楽死会話と終末期ケアを介した社会的死の予防:オランダからのレッスン
ヘルシズム
ツァイガルニク効果
日常生活活動 (ADL)
ノートハウスのヘルスコミュニケーション「異文化間コミュニケーション編」
ソクラテスとアスクレピオスと鶏とニーチェ
B・マイヤーホフ論文「ちょうどいい時に死ぬ」論文ノート
人は多様に病み単純に治る(テーゼ)
高度副プログラム「ソーシャル・デザイン」
科学人類学(科学の人類学)

〈言語 の翻訳〉における現場での混乱
【老人がもつ生産的権力について考え よ!】フーコー『知への意志』ノート
看取り力から「看取られ力」へ の構造転換
加齢ははたして病気か?
ローカル・グローバル・コネクション
患者サイボーグ宣言
人間機械論・再考
サイボーグ
塩、 砂 糖、脂肪、怠惰
生命の質
書誌:日本における自殺研究
現代不老不死論——脳死・臓器移植問題を考える(1993)
公的領域と私的領域に関する議論
道具と 人間の身体がつくる世界
ワー ク・ ライフ・バランス批判
阿南成一『安楽死』(1976)の研究
医療人類学資料集:老女ナタルクの最期
アーサー・フランクの「死に行く人とその人の 権利」テーゼ
ジャ ン=ジャック・ルソーは囚人のジレンマを感じるのか?
看 護の定義
語 りは出来事の報告ではなく、出来事そのものである
狂気を装う
語り部の意味
未開社会における安楽殺の倫理
人間は〈病む存在〉である
散骨は自然葬ではない!
苦悩体験の理解
ユカギールの悲劇
がんサバイバーとのコミュニケーション
人の身体は物質によって定義できぬ
歴史は死を前提とする
死の問題について
天 使の死とスープの味
加藤尚武氏書評「安楽死問題の名著」へのコメンタリー
オランダにおける安楽死の研究
アステカの生と死の女神
近代病院のなかの伝統的「死」
死の 勝利について
生と死の儀礼 における分類の次元
神は死んだ、をめぐる人間の誕生
安楽死の研究
魔法医学の起源
家族に埋め込まれた死——文化人類学からの諸見解
病気と文化 人 間の医療とは何か?
認 知症コミュニケーションへの招待
「リプロダクション:「産むこと」は単純ではないのか?」
憑依 病める身体は誰のものか?
老女ナタルクの最期
構 築主義について
老人問題・研究叢書
認知症と 呼ばれる老い人が「うちに帰りたい」 というとき、何が起きているのか?
老いをたのしむ〜♪
9「エイジングと文化 老いはどのように捉えられているか?」

クレジット:池田光穂・西川勝・宮本友 介「高齢化社会のデザイン(2010)」を元に池田が増補改訂したものです。西川さん・宮本さんに感謝します!

リンク

リンク(サイト外リンク)

文献

その他の情報

Copyleft, CC, Mitzub'ixi Quq Chi'j, 1996-2099

池田蛙  授業蛙  電脳蛙  医人蛙  子供蛙

Georges Condominas, We have eaten the forest, 1977[1957]

An anthropologist in void, May 2018
++

Copyleft, CC, Mitzub'ixi Quq Chi'j, 1996-2099